まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

俺はまだ恋に落ちていない2

俺はまだ恋に落ちていない 2 (GA文庫)

俺はまだ恋に落ちていない 2 (GA文庫)

ストーリー
ある日、赤井は詠羅に一目惚れした後輩の相談を受ける。
必死に頼み込む彼の姿に心を動かされ、赤井はやむなく、詠羅を紹介すると約束してしまう。
赤井に説明され、愛子に諭されて、一度会ってみることを了承した詠羅だったが……。



最初から最後まで、赤井の“てんてんはか”っぷりが光る2巻目でした。
もう、あらすじの時点で「何やってんだこいつ」と思ってましたが、読み始めてからも何度も「ほんと何やってんだこいつ」と。面白いのに、読み進めるのにかなり苦労しました。
愛子さんに怒られるのは当然として、あの恵衣美ちゃんが詠羅ちゃんに同情するほどですから、改めて呆れ返ってしまう。
まあ、道くんも確かに本気みたいに見えたし、剣幕も凄かったですから、断りきれない部分があったことは認めるけれども。
あれだけまっすぐに自分への好意を示してくれている! あんなに可愛くて純粋な女の子を! 他・の・男・に・紹・介・す・る?
いやいや、それはないですよ赤井さん。ロマンスの神様も爆笑して断罪するレベル。もうため息しか出てきません。
一度のあやまちは誰にでもあるものです。途中で振り返って、正しい道へ戻ることができればそれでいい。
でも赤井は、何度も戻るチャンスがあったのに、結局行き着くところまで行かないとそれに気付くことができませんでした。
赤井はそれでいいのかもしれませんが、詠羅ちゃんと、そして恵衣美ちゃんの気持ちを思うと、やっぱり……はあ、てんてんはかだなあ……。


主人公は情けないけれど、ヒロインとそれをとりまくサブキャラ陣は相変わらず素敵な面々。
渦中のヒロイン・詠羅ちゃん。今回あまり笑顔のシーンは多くなかったけれど、いちいち健気で、愛らしくて、魅力的でした。
深く傷ついただろうに、それを表に出さないで、いつもの顔で過ごしていて、それが逆に痛々しくて、見ていられない。
一方の恵衣美ちゃんも、赤井を茶化して、詠羅ちゃんに憎まれ口を叩いて、でも心の底では心配する、優しい一面を垣間見せます。
妹のことを心配しながら、詠羅ちゃんのことで心を惑わせる赤井に傷ついて、怒ってしまう彼女は本当に可愛い。
この姉妹は、片方が登場するたびに「詠羅ちゃんの方が可愛いな」「いや恵衣美ちゃんの方が」と、とっかえひっかえに思ってしまうほどに拮抗する魅力を持っていて、全くもって甲乙つけがたい。赤井は自分がどれだけ幸せなのかもっと噛み締めるべきですね。
詠羅ちゃんに一目惚れした後輩・道君は、粗暴だけれど誠実で、気持ちの良い男の子だなあという印象。
彼もいわば被害者であるわけで、詠羅ちゃんの想いを知るこちらとしては、楽しそうにデートするその姿に、心苦しさを感じずにはいられませんでした。ここまでこじれなければねえ。
気持ちの良い男といえば、なんといっても格好良かったのは田所。彼は一流のトリックスターではないでしょうか。
お調子者のくせに、こいつが出てくると全てを解決してくれそうな謎の安心感があるから不思議です。ヒロインふたりの兄という立ち位置も大きいのかもしれません。
最後に述べておくべきは空河ですか。この子も、ずいぶんとまあ、不器用な子だと、変に感心してしまいますが。
ライバルは強大で、しかもふたりもいますけど、あの朴念仁はまだ恋に落ちていませんから、追い上げるチャンスはまだまだ。これからですね。


すれ違いと痛みと涙の果てに、とりあえず、笑顔を見ることができて良かったです。
赤井の気持ちは、さて、どこまで行っているのやら。見えそうで見えないところを、うようよしているような気がします。
今回は、終わってみれば、どちらかというと詠羅ちゃんのターンでした。次は恵衣美ちゃんのターンが来るのか、それとも。次巻も楽しみです。


それにしてもこのイラストの破壊力たるや。特に恵衣美ちゃんの表情がいちいち卑怯。