まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

俺が彼女に迫られて、妹が怒ってる?

俺が彼女に迫られて、妹が怒ってる? (MF文庫J)

俺が彼女に迫られて、妹が怒ってる? (MF文庫J)

ストーリー
とある事故がきっかけで霊に触れることができるようになった一ノ瀬悠斗とその妹・亜夢。
この能力を活かして悪霊退治を行いながら、仲の良い二人暮らしを送っていた。
ところがある日、二人の前に炎の剣を操る美少女除霊師・桜ヶ丘ひよりが現れ、いきなり悠斗に告白してきて……。



野島けんじ先生の新作。前作が好きだったので読んでみました。
ちょっと読んだ時点で、ああ、野島先生の文章だなあと一種の安心感。平易なようでいて、実はクセが強いと思うんですよね。この文章。
地の文は一人称なんですけれども、語り口が前作にそっくりでした。特にコメディ部分だとそれが顕著です。
女の子の可愛さが存分に現れていて、個人的には結構好きなんですけどね。
お話の展開が、またかなり独特です。ジャンル的には間違いなくラブコメなんですが、ただのラブコメにしては、ところどころ結構エグい。一種テンプレ的なコメディパートに油断してると、予想外の方向に叩き落とされる。
肝心なのは、エグいんだけれどあくまでハッピーエンドだということです。言ってしまえばご都合主義なのかもしれませんが、そこがいい。


霊の存在が一般に認知されている世界で、霊に触ることができる力を手に入れた兄妹・悠斗と亜夢。
そんなふたりの前にいきなり現れて、いきなり「期間限定でつき合わないか」などと言い出す美少女・ひより。
何か裏があることは分かりつつ、その理由がなかなか明らかにされなくて、うやむやのままにラブコメパートが進んでいきます。
タイトルからは亜夢vsひよりという構図を想像するけれど、むしろ、ひよりと、除霊師・すずめとの争いの方がメインだったような気も。
ひよりとすずめ、タイプの違う強引な美少女ふたりに引っかき回される悠斗は、大変そうだけれど実に羨ましいですね。クラスメイトの嫉妬を買うのも当然といえる。
ただ、どれだけひよりに「迫られて」も妹のことを第一に考える悠斗には感心しました。別にシスコンというわけではないんでしょう。妹思いだというのはいいことです。


回収されていく伏線、明かされる謎、そして一気にクライマックスへ。
いやあ正直、わりとあからさまな伏線が多かったので、この展開が来るより先に気付いてはいたのですが……それでもやっぱり衝撃的でした。敵の悪霊に腹が立って仕方がないですね。
いよいよ追いつめられて、もうどうしようもない状態。そこからのひっくり返し。これが上手いと思います。
明らかに無理やりハッピーエンドに導いていることが分かってしまうと白けてしまうものですが、ここでもご丁寧に伏線が張られていたから、もうしょうがない。参りましたの一言。
一瞬、次からタイトルを変えなきゃならないのでは? なんて思ってしまいましたが、これで一安心ですね。
1冊かけて物語の土台が整ったので、次からはまた新たなストーリーが始まっていくのかな。アクションはもちろん、魅力あるヒロインたちとの恋愛模様に期待です。


イラストは武藤此史さん。前作から続けての登板ですね。ヒロインがどの娘も可愛いです。特に亜夢。
ひよりの胸の大きさについて本文と食い違っているのは少し気になりました。これ、どう見ても薄くはないように見えるのですが……。


「俺」タイトルにも長文タイトルにも好意的な私ですが、この作品にはあまり合ってないように感じました。ううん。