まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

シュガーアップル・フェアリーテイル 銀砂糖師と黄の花冠

ストーリー
キースと共に新工房を開こうと決意したアンの元に、王城からの要請が届く。
それは、一流の砂糖菓子職人たちと共に、ある仕事を引き受けろというものだった。
王城の奥深くでアンたち職人を迎えた依頼人は、なんと王妃マルグリットその人で……。



「ペイジ工房編」から、新章「銀砂糖妖精編」に突入。
銀砂糖子爵の秘密や、砂糖菓子の真実などが明らかにされて、物語も佳境に入ってきたのだと感じます。


アンやエリオット、ついでにキースなど、腕がいいと評判の職人たちを突如王城に集めたヒュー。
そこに現れるマルグリット王妃。明かされる王家と銀砂糖子爵の秘密。そして銀砂糖妖精・ルル。
いやあ、あの、馬鹿にされながらも一生懸命に砂糖菓子を作っていたちっちゃな女の子が、遂にこんなところまで上り詰めたのかと思うと感慨深いですね。一生懸命なところとちっちゃな女の子というところはあまり変わっていないけれど。
腕を認められるようになっても、砂糖菓子に対するまっすぐな思いはそのままでいるアンがとても素敵。
今回も、銀砂糖子爵になれるかもしれないというところではなくて、まだ自分が知らない技術を学べるのだということからこの仕事を引き受けました。
それは多分、周りの4人も同じだったのではないかと思います。常に先を目指し続ける、職人の生きざまがここに表れていますね。格好良い。
その生粋の職人たちの中でもやはり、アンは特別に見えました。キースが羨ましがるほどに、彼女は砂糖菓子に対してまっしぐらです。
何も疑問に思うことなく、ひとつの物事に打ち込み続けることができるアンは、やはり一種の天才なのではないでしょうか。


歴代の銀砂糖子爵によって受け継がれ、今アンたちに伝授されようとしている銀砂糖妖精の技術。それは、今まで見てきた砂糖菓子とは何もかも異なるものでした。
このシリーズが始まった頃は、形を作って色を付けることしかバリエーションがないのに、どれくらい続けられるものかと疑問にも思ったものですが……。いやいやどうして、砂糖菓子の世界も奥が深い。
ルルから与えられたヒントを元に、アンをはじめとする職人たちが、プライドをぶつけ合いながらも試行錯誤を繰り返し、ひとつの作品を創り上げていく様子にわくわくしました。
ものを作る楽しさってこういうことなんだよと、アンから伝えられたような気がします。


アンとシャルによって、砂糖菓子職人の世界に大きな変化が訪れようとしています。
この変化が何をもたらすのかはまだ分からないけれど、人と妖精が手をとりあって砂糖菓子を作っていくことができたら喜ばしいですね。
一方、アンとシャル、そしてキースの関係もようやく動きを見せました。キースが行動に出たことが、お互いに遠慮してばかりだったアンとシャルの想いの起爆剤になってくれるといいなあ。その場合、結果的にキースはピエロになってしまいますけれども。
最初の砂糖林檎の木のことや、アンの母親のことなど、これからにつながる伏線もちらほらと。先の展開が楽しみです。


王妃とヒューの過去話はもっと詳しく知りたいな。胸きゅんの匂いがします。