まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

ライジン×ライジン RISING×RYDEEN

ストーリー
『異能』を持つ人々、ストレンジャーに憧れ続けてきた高校生、下野根隆良。
アリアと名乗る謎の美女に導かれ、隆良が手に入れた念願の能力は、最低ランクの『残念異能』だった。
そんな隆良が通う学校に、かつての幼馴染にして『最強異能』の持ち主、雷轟魅神が転校してきて……。



第23回ファンタジア大賞<大賞><読者賞>W受賞作品。
弱い者が最強に打ち勝つ熱いバトルアクションを期待して読んでみたら、もっと別の何かでした。いえ、これはこれで楽しいんですが。
どちらかというと、アクションではなくてギャグと下ネタが主体でしょうか。文章自体は妙に読みやすかったです。
中二ギャグやぶっ飛んだ下ネタはなかなか好きなのですけれど、隆良のツッコミがちょっと空回りしていたような気もします。


まず、主人公の隆良が実に痛い子でした。この痛々しさは結構限界に近い。
ストレンジャーと呼ばれる、異能を持つ人々にずっと憧れてきた隆良。そんな彼が日常的に繰り返す、自己陶酔に満ちた妄想には思わず苦笑い。
夜侘といい、沙凪といい、なんでこんな中二脳の持ち主ばかり集めてしまったの、アリアさん。
見ている分にはまあ楽しいけれど、こんな3人に囲まれたらめちゃくちゃ疲れそう。魅神、哀れすぎる。
まあ、変な二つ名や技名を考えたり、そこに響きだけはいいルビをふったり、なんていう中二成分はまだいいとして、論拠もなく自分が一番だと思っちゃっているところにひどい小物臭を感じます。
もともと何も持っていない状況で培われた妄想だから、いざ負けても懲りそうにないところが厄介。誰かこいつをどうにかしろよ!
ヒロインの中では、魅神がメインヒロインっぽい立ち位置にいるような気もしますけど、夜侘と沙凪の方が魅力的だったかな。
特に夜侘は、出だしこそ生暖かい目で見ていましたが、隆良あたりに比べれば全然まともだし、やきもちの焼きかたがとても可愛らしいと思います。
男の趣味はよく分かりませんけどね。沙凪も魅神も、あとついでにアリアもそうです。なんでこんな奴に!


隆良に現れた異能は、“なんか身体中から、白く濁ったゲル状のものが出る”というもの。
これはひどい。長年待ち望んでようやく手に入れた能力がこれだったら泣く。
女の子に対して使ったらセクハラで訴えられそうですね! 実際使いまくってるけどね!
モチーフはなんとなく予想しつつ、まあそこまで大っぴらにはしてこないだろうと思っていたら、堂々とネタにしていて笑いました。いいんですかこれ。
でも、確かに残念な異能ではあるけれど、別に弱いわけではないかなあという感じ。せめて色さえ違えばなあ……そういう問題ではないか。
夜侘や沙凪の能力も微妙といえば微妙だけれど、やりようによっては魅神とさえやり合えるほどの可能性を見せてくれたので、これからどうなるかに注目です。


ようやく魅神が仲間(?)になって、お話が動き出しそうなところで次に続く。
展開としてはまだプロローグといった感じですから、とりあえずは2巻が楽しみですね。
きっと出てくるであろう他の異能力者とのバトルや、ヒロインたちによる恋のせめぎ合いに期待。


イラストはパルプピロシさん。沙凪のおでこが好きです。魅神の雷撃も格好良い。
でも、隆良が能力を使っているイラストがなかったのはなぜなんでしょう。まさかの編集NG?


最高神の粘着液<ゲル・オブ・オーディン>』のセンスは評価したい。