まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

人生

人生 (ガガガ文庫)

人生 (ガガガ文庫)

ストーリー
九文学園第二新聞部に所属する赤松勇樹は、入部早々に部長の二階堂彩香から、人生相談コーナーの担当を命じられる。
生徒たちから寄せられた悩みに答えるのは、理系、文系、体育会系を代表する女子三人組。
三者三様の意見はいつもまとまらずに、とりあえず実践してみることになるのだが……。



このタイトルは釣られちゃうよねえ、ということで読んでみました。
1話ごとにひとつ、生徒たちの相談に答えていって、全部で10話。それぞれのエピソードはそれほど長くなく、会話も軽快でテンポがいいのであっさりと読めますね。
喋っているのは主に女の子たち3人。主人公の赤松も一応、語り手としてその場にはいるのですが、彼はほぼおまけのようなものです。
選ばれし3人の女の子は、理系代表で論理的な思考の持ち主である梨乃、文系代表でときどき突飛な考えが飛び出てくるふみ、体育会系代表でノリと勢いのある解答を導き出すいくみ。
それぞれ自分の分野に特化した意見を提示してくるのだけれど、どの意見もどこかずれていておかしい。そんな3人が、ああだこうだと議論になっているのかどうかさえ分からない言い合いをするものだから、もう手がつけられない。
基本的には淡々と喋っているのですが、いつの間にかまるで別の方向に話が飛んでいったり、変な行動を起こしたりして、思いもかけない終わり方を迎えてしまいます。
というかほとんどの回で、あれ、相談内容ってなんだっけ、みたいな感じ。どうしてこうなった?
お話の展開における、このシュールさが、なんともやめられない魅力を醸し出していると思います。


梨乃もふみもいくみも、それぞれいい味を出しているけれど、個人的に一押しなのは文系女子・ふみですね。
まず発想が面白い。相談に対する最初のアンサーで一番笑ったのが、彼女のものでした。
相談4「部員が足りません」とか、相談8「仲直りしたい」とか、この辺の回答が特にじわじわきます。
本人としては大真面目に、抜けたことを言い出すから笑えるんですよね。いや、これはふみに限ったことではなくて、全員そうなんですけど。うん、どう考えても選出ミスだろこの3人!


ずっと同じような流れで行くと見せかけて、最後に少しいい話なんかを持ってくるあたり、実ににくい。素敵じゃないか。
まったりのんびり、ときどきこういうのを挟みながら、マイペースに続いてくれるといいなあと思います。
ちょっと気になるのは、赤松と梨乃との関係ですね。振り返ってみると、梨乃だけは赤松とのイベントがちょこちょこ用意されていました。これから何かあるんじゃないかと予感させます。
空気気味だった主人公だけれど、次第に存在感を増していくのかもしれません。ふみやいくみのターンもあるといいな。
ちなみに、読者参加型の人生相談企画も開催中だそうです。3人娘に相談を聞いてもらえるチャンス! 試しに応募してみてはいかがでしょうか。


イラストはななせめるちさん。女の子たちがやわらかそうで可愛い。
寝そべって笑いをこらえるふみのパンチラにドキリとしてしまいました。ええい邪魔だ左足!


略し方は「全」でどうでしょう。必要ないですか。そうですか。