まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

GOSICKsⅡ―ゴシックエス・夏から遠ざかる列車―

  • ストーリー

夏休みに入って人気がなくなった聖マルグリット学園。
予定がなく居残るつもりだった九城は、一緒に地中海へ行かないかとアブリルに誘われる。
喜んで荷造りにとりかかった九城だったが、兄からヴィクトリカへの挑戦状が届いて……。


夏休み、生徒たちの姿が消えた学園で、九城とヴィクトリカが2人きりの毎日を過ごす短編集第2弾。
生徒がいないので、図書館塔の外に出て東屋や芝生でゆっくりできるのはいいけれど、2ヶ月もの長い休みをそんな風にして過ごすのは流石に辛い。
そりゃあヴィクトリカじゃなくても退屈するってもんですけど、そんな倦怠な毎日の中でもせっせと事件を見つけてくる九城は、健気というかなんというか。
文句たらたらながら、ヴィクトリカだってしっかりそれに付き合っているわけで、セシル先生ではありませんけれども、仲良しの2人に微笑ましい気分になりますね。
でも今回のアブリルは流石にちょっと可哀想だったかな。
九城がヴィクトリカを放っておけないことを理解しているからこそ、さらに寂しい気持ちになったことでしょう。
そんな寂しさを押し隠して元気に冗談を飛ばす彼女は、本当にいい子だと改めて思いました。


学園のメイドや、遠い母国にいる九城の姉など、普段表に出てこない人々が活躍していて興味深かったです。
第三話「夏から遠ざかる列車」では、学園を去るお嬢様・ミス・ラフィットと、学園のメイドのゾフィとの胸温まる(?)交流のお話。
読んでいるうちに意外な事実が明らかになってきて、クスクスと笑ってしまいました。
しかしこんなトリックを使ったところを見ると、確実に計画的犯行ですよね。あどけないように見えて意外としたたかなものです。
九城の姉・瑠璃が登場するのは第四話「怪人の夏」。
父から無理やりの結婚を迫られて怒る瑠璃と、その相手の、不器用で善良な軍将校の、淡くほろ苦いやりとりが描かれています。
ええと、瑠璃はあれだ、ツンデレだ。そう捉えてもいいのですよね?
絵画の怪盗らしき人物も出てきて、また面白いことが起こってくれそうな予感がします。続きがあるといいな。


書き下ろしの第六話「初恋」の主人公はブロワ警部です。
ああ、もうだめだ。なんて純朴で一途な男なんだ、グレヴィール・ド・ブロワ。
初恋相手の幼なじみを、相手が結婚しても、変な髪型を強制されても、影からさりげなく支え続ける。まず、できることではないと思います。
胸にちくっと刺さる切なさがあって、とても好きなお話ですね。


犬と鼻を合わせるヴィクトリカが愛らしすぎて抱きしめたい。
九城の自制心にはつくづく感服せざるを得ません。