まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

GOSICKs―ゴシックエス・春来たる死神―

  • ストーリー

久城一弥がソヴュール王国・聖マルグリット学園へ留学してきて半年。
朝早く村への道を歩いていた久城は、男が首を切られて死んでいる現場に遭遇する。
その上なぜか、おかしなヘアスタイルの警部に犯人扱いされてしまい……。


久城とヴィクトリカの出会いが描かれた短編集。
今までの長編とはまた違い、小さな事件がたくさん起こっていくので楽しいです。
それぞれの事件が順に解決されていくのですが、それで終わりではなく、次の事件と関連しているのがまた面白い。
短編と長編、どちらの要素も味わえる1冊だと思います。


書き下ろしの序章では、久城と出会う前、学園へ来てからすぐのヴィクトリカの様子が描かれています。
正直言って何の役にも立っていないように思えたセシル先生も、意外と、地味に、陰ながら、頑張っていたんだなあ。
久城とヴィクトリカを直接的に引き合わせたのはセシル先生であるわけで、この作品において彼女が果たした功績は実はかなり大きいんですよね。
キビキビとした久城のロマンチックな部分や、退屈だとわめくヴィクトリカの隠れた寂しさ。
そんな部分に気付くことができた、つまり自分の生徒を思い、よく観察していたからこそ、セシル先生は2人の橋渡しをすることができたのでしょう。


誰にも興味を示さなかったヴィクトリカが、なぜ久城とは接するようになったのか。
セシル先生の頑張りによって引き合わされる前に、久城の存在に彼女が気付いていたなんて思ってもみませんでした。
久城も九城で、金色の少女との出逢いを夢想していたようだし、2人は出会うべくして出会ったのだということを実感します。
出会った当初はぎこちないけれど、いくつもの事件を経て、次第に打ち解けあっていく2人に、胸が温かくなりました。
しかし改めて見てみると、この頃の九城はまだ、成績が優秀であることや、帝国軍人の三男であることに対しての子どもっぽいプライドが、ずいぶん強いように思えます。
九城もヴィクトリカとの出逢いによってずいぶん成長してきたのですね。
ヴィクトリカに関しては、もう言うまでもありません。ずっと可愛くなったよ。


それにしてもつくづく面白いところですねえ、聖マルグリット学園というのは。
大泥棒の財宝が隠されていたりとか、転校生・アブリルの衝撃の事実が明らかに? なったりとか、明かされていなかった事実がざくざくと出てきます。
ブロワ警部はいつも通りなんですけれども、まあ逆に言えば、いつも変わらない彼の調子の良さに癒されることもあるんじゃないかな。


なんとなく雛あられが食べたくなりました。雷おこしはいらないけれど。