まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

伝説兄妹!

伝説兄妹! (このライトノベルがすごい!文庫)

伝説兄妹! (このライトノベルがすごい!文庫)

  • ストーリー

詩人を志しながら才能がなく、金もなく、しかし働きたくはないダメ大学生・柏木。
食糧を求めて入り込んだ山で、彼は1人の身元不明の少女と出会う。
少女を連れ帰った柏木は彼女に凄まじい詩の才能があることを知り、その詩で金儲けを企むのだった……。


第1回『このライトノベルがすごい!』大賞特別賞受賞作品。
これは確かに「すごい」作品だったように思いますね。なんとなくですが。


まず柏木。これがどうしようもない駄目人間です。
人から借りた金は返さないわ、少女が書いた詩を自分のものとして売って満足するわ、自分では何もしていないのに偉そうに振舞うわ。

「……君という奴は絶望的だな」

という友人・大塚の言葉には読者としても深く頷かざるを得ない。そんな主人公になっています。
そしてこの主人公が拾ってきた少女・デシ子。
素直でまっすぐで従順、とても可愛らしい女の子ですが、詩を書かせると驚くほどの才能を発揮します。
柏木がデシ子を騙して詩を書かせ、それを売って金を儲けてウハウハ……というドタバタ生活コメディでした。途中までは。
てっきり「嘘がデシ子にバレて何かしらの和解があって終了」という話だと思っていたのですが、物語はラスト100ページで驚くほどスケールの大きな展開へとなだれ込んでゆきます。


どうにも救いようのないキャラだった柏木。
しかしデシ子との出会いがあり、実際に危機に瀕して、ようやく少し成長した姿を見せてくれます。
他人を救うために行動し、デシ子を信じ続けた柏木。ちくしょう、ちょっとだけ格好良く見えるじゃないか。
柏木が書いた最後の詩はなかなか胸を打つものでした。


読み終わってみるといい物語だったなあと思います。
ギャグにも笑わせてもらったし、楽しいエンターテイメント作品に仕上がっているのではないでしょうか。


イラストはYAZAさん。かなり独特の絵柄ですね。
初めはどうかと思いましたが、慣れるとそんなに気にならないというか、これはこれで味があっていいんじゃないかと思います。


熊に遭ったら絶対に走って逃げてはいけません。基本だね。