まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

一介のラノベ読みがWake Up, Girls!という物語にどっぷり飲み込まれたお話

かつて、或る芸能プロダクション社長はこう言い放った。

松田、アイドルってなんだと思う? ……物語よ。
              ――――丹下順子



 ……とまあ、本文の内容を考えるよりも先にタイトルを考えついてしまったので一見大仰な書き出しとなってしまったのだけど、なんのことはない、Wake Up, Girls!の話である。
 最近のTwitterを見てくださっている方ならご存知のことと思うけれど、ここのところの僕はどう贔屓目に見ても「ラノベ読み」と呼べるような活動をしていない。いや、読んではいる。買ってはいる。いるのだけど、どうも身が入らないというか、優先順位がはっきりと下がってしまっている。


Wake Up, Girls!のせいだ。


 こんな世界の隅っこのブログまで読んでくれている真摯なラノベ読み諸氏には本当に申し訳ないと思っている。でも許してほしい。3月で解散する彼女たちの、正真正銘のラストライブが3月8日に迫っている。だから3月までは、3月までは僕を、ワグナーでいさせてほしい。こんなにも完全にはまってしまったコンテンツは、それこそライトノベル以来なのだから。
 今回は3月8日のSSAに向けて、僕がどのようにして、これほどまでにWUGに落ちるに至ったかを備忘録的に書いていこうと思う。正直いって、ラノベ読みはもちろん、ワグナーにとっても全然面白みのない記事、もしくはポエムになると思う。だからどうかここでブラウザバックしてほしい。恥ずかしいので。






 よし。誰もいなくなったな。じゃあ語り始める。
 僕が初めてWUGを生で見たのは、あの伝説のイベント「MONACAフェス」でのことだった。参戦目的はもっぱらアイカツだったのだけど、初めて生で見るWUGちゃんのパフォーマンスに驚いたのを覚えている。うーん、上手く言えないのだが、なんだかすごく熱を感じたのだ。もちろん大好きなSTAR☆ANISや、アイマスチームにもそれは感じたはずなのだけど、もっともっと全力全開でぶつかってくる感じというか。本能的に、「あっ、この子たち応援したいな」と思わせてくれるエネルギーがある、そんなグループだった。誰一人として、名前すら知らないのに。
 ただ残念なことに、その時は単独ライブに参戦するまでには至らなかった。アニメは全話見たし、今Twilogを遡ってみたらベストもしっかり買っていたみたいなのだけど、やっぱり固定ファンがすでについているライブに新しく乗り込んでいくのは勇気がいる。誰か誘ってくれーと待ってる間に時は経ち、すっかりMONACAフェスのときに感じた熱を忘れてしまっていた。今から思えば、本当に本当にもったいないことをしたと思う。あの時にワグナーになっていれば、あのツアーにも、あのイベントにも、間に合ったのになあ。


 戻らない過去を嘆いていても仕方がないので、WUGとの再会の話をする。MONACAフェスから丸2年。2018年4月。たまたまニコ生で見ていたWUGフェス2016一挙放送で、いつか忘れていたWUGへの熱がどこかから再びぶり返してくるのを感じて、そしたらなんと5月に幕張でライブイベントを開くという。仕事のシフトを見たら偶然空いてる。しかも一般販売のチケットがまだ残っているらしい。行くか。行こう。そうして僕は運命の扉を開いた。
 同行者がいないもんだから、予習は独学でしなければいけない。アニメを劇場版BtBまで見て、たまたま録画してた新章も見て、3rdのライブBDも買って見て、WUGちゃんねるの生放送もたまたま見た、らしい。正直記憶にないけど、Twilogを見たらそう書いてある。ほんと、沼に落ちる(この言い回し、実はあまり好きではないのだが)のは一瞬なのだなあ。


 Green Leaves Fesに参戦する前から、推しは決まっていた。実をいうと、MONACAフェス以前に決まっていた。2014年の年末、ニコ生の「電波諜報局」に我らが姫・田村のゆかりんがゲストで出た回がある。それはもう最高に面白い回で、タイムシフトやグレーゾーンな方法で何度も何度も見たのだけど、その回のもう一組のゲストがWUGの吉岡、青山、高木だったのである。そこで、とんでもない可愛さを見せてくれたのが吉岡茉祐だった。今でも某所で見られるので、もし興味があれば「天才まゆしぃ」でググるとよろしい。
 ともかくその記憶が強烈にあって、最初から推しはまゆしぃだったのだけど。予習の際に見たライブ映像の、歌やダンスのイケメン極まる姿にまた惚れ込んだ。


 グリフェスは衝撃的だった。2階スタンドの遠目の席だったのでまったり楽しもうなんて思っていたのが大間違いだった。遠いステージからでもビシビシと突き刺さってくるエネルギー。ファンの投票によって選ばれた最強のセットリスト。すぐ後ろの通路をWUGちゃんが走り抜けていったのはダメ押しだった。や、マジ、まさかこんなところまで来るとは思わないじゃん。まゆしぃがすぐそこで歌って踊ってくれたのは嬉しかったなあ。思えばゆかり王国民にとって「推し」などというものは存在しえないし(言わずもがな、全ての国民が唯一無二の存在に絶対忠誠を誓っているからである)、STAR☆ANISをはじめとしたアイカツの歌唱担当にも特に「あの子を特別に応援する!」といった思いは抱かなかった。僕には今まで「推し」というものがいたことがなかった。だから、あるグループの特定の誰かを好きになるということが、こんなに楽しいことだと初めて知ったのだ。WUGにはまるきっかけは、そんなところにも転がっていたのかもしれない。
 グリフェス当日にわぐらぶに入会して、WUGちゃんねるにも登録して、ホラーゲームに絶叫するまゆしぃの愛らしさを堪能した。なんと、WUGちゃんねるに送ったグリフェスの感想がまゆしぃに直接読まれたりもした。順調に新参ワグナーとしての道を歩んでいった、そんな矢先にあの情報が舞い込んできた。


Wake Up, Girls!、2019年3月をもって解散。


 えーーーーー、うそでしょーーーーー。衝撃よりも先に、唖然としてしまった。だってまだワグナーになって1ヶ月しか経ってない。初参戦のツアーも控えてまだまだこれからというときに、なんでそんなことになってしまったのかという思いが強かった。でも、次にやってきたのは安堵だった。だって、このタイミングでWUGに出会うことができなければ、一生その機会は失われたままだった。あまりにも遅すぎたけれど、間に合ったのだから。
 で、結局のところ、僕がWUGに完全にのめり込んでしまったのはこの解散発表があったからなんだろうなと思う。僕のWUGとの出会いを物語だとするのなら、冒険に出た直後にラストダンジョンに突き落とされたようなものである。そういうタイミングって大事で、ゆっくり育てるはずだった好きが、一気に僕の中で爆発してしまった。HOMEツアーを追っかけることになったのもそのせいである。僕は王国民になってそれなりに経つけれど、今までライブの遠征というと福岡に1回と名古屋に1回行ったことがあるくらいだった。ツアーの全公演は無理でも、せめて全会場を回ろう……なんて無茶なことは、解散を間近に控えたユニットでもなければ絶対にやらなかっただろう。で、回った。最終的には12会場31公演になった(岸和田の2日間が完全にゆかりっくFesとかぶったので、平等に1日ずつ行った結果である)。


 当たり前のことだけど、触れる時間が長ければ長いほど、そのコンテンツへの愛着は増えていく。で、これは本当にWUGの凄いところだと思うのだけど、これだけツアーを一緒に回っても「飽きた」とか「同じ内容だから行かなくてよかった」とか思ったことがたったの一瞬もない。僕はわりと飽きっぽい方なので、セトリが同じライブなら1回か2回行けば十分だと思っている。だから今までも全通なんてしなかったのだけど、WUGに関しては本当に後悔がない。毎公演新しい発見があって、WUGの成長があって、ワグナーの成長があって、バラエティに富んだその地だけの企画コーナーがあって、その地だけのMCで笑い、時に涙し、そして全力で叫ぶ。


 色んな方面から怒られるのを承知でゆかり王国と比べてみたい(なぜなら僕が他の比較対象を知らないから)。田村ゆかりというコンテンツはWUGに比べると圧倒的に完成されている。僕らは完成された彼女の歌声に、素晴らしいステージングに、憧れそして恋をする。それでいて、彼女は常に、今も挑戦を続けている。これだけ完成されていながら、常にファンに新しいものを見せようと上を目指している。どこまでゆけば気が済むのかと、ファンの方が心配になってしまう。そして王国民は、(パッと見は仲がいいようで実は何かとヒリついている)ワグナーと比べると、あくまで僕の感覚でだがやっぱり圧倒的に統制されている。コールはゆかりんのためにあり、ペンライトはゆかりんのために振られる。MIXや光害はおろか、UOすらこの王国には存在しない。
 一方、WUGは常に成長の真っ只中にある。それはメンバーのことに限らず、彼女たちやアニメのことを含んだコンテンツ全体のことでもあり、彼女たちを取り巻くファンのことですらある。HOMEツアーをともに走り抜いて、僕が一番強く感じているWUGの強さである。公演数は尋常でないとはいえ、たかが半年のツアーである。なのに、市原で見た彼女たちの歌やダンスと、仙台で見たそれとは明らかに別物だった。観客サイドから見るならば、前の会場では存在したコールがいつの間にか消えていたりするし、逆にワグナーや時にはメンバーの発案によって新たなコールやペンライト芸が生まれたりもする。ぶっちゃけいざこざもある。正直僕も、前にいたワグナーがMC中にぺちゃくちゃ喋るわMIXを歌にかぶせるわのやりたい放題でイラッとしたことがある。ワグナーは到底一枚岩ではない。しかし、そんないざこざを一旦脇において、仙台千秋楽公演でのワグナー主導のサプライズ企画が成功したりもする。


 別に、どちらがよいとかの話ではない。正直、居心地がいいのは王国の方と思う(もしかしたらゆかり王国にも裏で色々あるのかもしれないが)。ただ、「今」先へ進んでいる、「今」戦っている、というリアルタイムの熱量でいえば、「今」間違いなくWUGの現場は熱い。今まで僕が見た、他のどの現場よりも。WUGは解散という「終わり」に向けてどんどん輝きを増している。超新星のように。そして彼女たちは3月8日、最後の大爆発を僕らに見せてくれる。約束の地・さいたまスーパーアリーナで。
 アイドルは物語である。でも、物語の読み方は人それぞれであって、最終章から読んでも全く構わないと思う。今なら、あざの耕平の一番盛り上がる場面から物語を読み始めるような、そんな贅沢にまだ間に合うのである(申し訳程度のラノベ要素)。だから、3月8日、少しでもWUGに興味があって、平日の夕方に時間が作れる人はぜひさいたま新都心に集合してほしい。WUGちゃんを照らす満天の星空の一員になりにきてほしい。まだ楽天チケットの追加販売が残っているようだし、なんならチケットを余らせているワグナーがTwitterにまだたくさんいるので。読まないでと言ったのに最後まで読んでしまった貴方にこそ、ぜひ来てほしいと思います。


 ちなみに僕はラノベクラスタ7人で連番を組んだよ。一緒に肩を組んでPolarisを歌うんだ。その時、SSAにはどんな星空が見えるんだろう。僕はそれが楽しみで楽しみで、きっと泣いちゃうと思うけれど、やっぱり楽しみで仕方がないんだ。