まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『ぼくたちの青春は覇権を取れない。 ―昇陽高校アニメーション研究部・活動録―』

ぼくたちの青春は覇権を取れない。 ?昇陽高校アニメーション研究部・活動録? (電撃文庫)

ストーリー
「どんな人間であれ、一日でアニメを約57本しか観ることが出来ない」ぼく、こと坂井九太郎が所属するアニ研は、上記のような世迷言を乱発する部長をリーダーとするダラダラ部活動だ。(ちなみに30分アニメからCMを抜くとOPED含め実質25分だからそれで計算して57本らしい。なんてアニメバカなんだろう)。部員はぼくと部長と、部長の幼馴染さん(女性。現実にいるんだ……なんてアニメキャラっぽいんだろう)の3人のみ。生徒会にも目をつけられてるようだし、果たして今後どうなるのかなと思っていたところに、来訪者が現れた。それはぼくの学年で一番注目を集めている美少女・岩根美弥美さん。彼女の出現を皮切りに、部には「アニメ」にまつわるちょっとした事件が次々と巻き起こり――?

高校の弱小アニメ研究部がちょっとした事件に巻き込まれていく青春部活×謎解き風味ストーリー。
ただのアニ研ものかと思いきや実は青春ミステリーらしいぞと聞いて手に取ったのだけれど、うーむ、作者も言ってるようにそれほどミステリーはしてないかも。探偵役はいるけれどね。
ある壁にぶち当たって困っている人がいたら、そんな人たちの壁をぶちこわし、乗り越えるために一緒に手を引いていく。ほっこりとした優しさのある謎解き物語になっていて良かったです。


物語開始当初で3人、最終的に5人になる、とある高校の小さなアニメ研究部が舞台。
主人公の坂井はわりあい平凡なやつだけれども、部長は高すぎるスペックをアニメに全部費やしている奇人変人。つまり探偵役ってことだ。わかりやすい!
一番ミステリーっぽいことをしていたのは2章でしょうか。学校で目撃される幽霊騒ぎを解決するという、これぞ! という日常の謎にニヤニヤしました。まあ謎といえるほどの謎でもないし、情報の後出しもあるし、やっぱりあんまりミステリーっぽくはないんですが。
それよりも、こうした事件を解決していくごとに増えていく魅力的なキャラクター陣のほうが重要です。ボケ、天然ボケ、ツッコミが揃っていて、部員たちのアニメにまつわる何気ないやりとりが楽しいのですよ。
1章でアニ研に加入するヒロイン・美弥美はクラスで一言も喋った姿を見た人がいない学校一の美少女。とある過去を解き明かしてもらったことをきっかけにアニ研に入ってくるわけなんですが、この子が実に魅力的でした!
単語ごとにしか喋らないほどに寡黙なんだけれども一度仲良くなった相手には距離が近くて、坂井と常に一緒にいたがったりもして、小動物みたいな愛らしさがあるんだなあ。


3~4章は弱小部を潰そうとする強権生徒会との戦い! うわー! 今日びこんなベタベタな学園ストーリーが見られるなんて!(歓喜
歴史の長いアニ研に残された伝説のアニメを発見するべく奔走するお話なんですが、とある人物の過去に大きく関わる展開となってゆき、切なさと温かさがじんわり胸に染みてくるラストが印象的でした。最後の謎解きをきっちりアニメの技法に関係させてくるあたりにこだわりが感じられますね。後味のよいエンディングでした。
読み切りのため続きはないとのことですが、とても素敵なキャラクターが揃っているのでもったいないという気持ちが強い! 坂井と美弥美の今後が気になるんじゃー!


イラストはうまくち醤油さん。女性陣は可愛く、また部長はイケメンに描かれていて主人公は普通。素晴らしい。
デザイン的には馬越先輩が一番好きですね……特にツン○レ顔。


作中に出てくるアニメを見たくなってくる病。