まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『ヒトよ、最弱なる牙を以て世界を灯す剣となれ グラファリア叙事詩』感想

ヒトよ、最弱なる牙を以て世界を灯す剣となれ グラファリア叙事詩 (ファンタジア文庫)

ストーリー
人間がヒトと呼ばれ、他種族の家畜や奴隷として虐げられている世界。奴隷の身ながらも、ヒトが誇りをもって生きられる国を作るという大望を抱き、知を磨き続ける少年ジノがいた。そんなジノを見初めたのは、ヴァンパイアの姫ヘネシー。ストーリア公国の跡継ぎ候補ながら辺境で燻っていたヘネシーの想いを見抜いたジノは、彼女に仕え、内政・交易・軍事と様々な分野で天才的手腕を発揮。彼女の領地を瞬く間に豊かにする。「ジノの夢はあたしが叶える。だからずっと傍にいてくれる?」そして、ストーリア公国に未曾有の政変が勃発するとき、ジノの才能は最大の輝きを発揮する――天才軍師として!

7種族の妖魔によって支配されヒトが家畜や奴隷として虐げられる世界で、ヒトの身でありながらヴァンパイアの姫の軍師となった少年の、野望に満ちた戦いの日々を描くファンタジー戦記。
ヒトの命が当たり前に消費されていくかなりハードな世界観の中、自らの才能だけを頼りに辺境領主であるヒロインを天下へと導いていく主人公の快進撃が小気味いい作品でした。
ヒロインであるヴァンパイアの姫がなかなかに魅力的で、主人公との種族を超えたラブストーリーにも期待ですね。


かつて世界を支配しながらも今や妖魔たちの食い物にされる最弱の種族・ヒト。そんな奴隷たるヒトの身でありながら書物を読み漁り知識を蓄えた少年ジノは、ヴァンパイアの姫テネシーに見初められて彼女の側仕えに抜擢される……。
7つの国がひしめく大陸で始まるファンタジー戦記なのですが、ヒトが虐げられる種族であり、支配者が妖魔たちであるというのが今作の特徴。
この世界でのヒトの扱いは本当にハードモード。ジノのかつての仲間たちも妖魔によって残酷な最期を迎えているし、奴隷扱いならまだマシな方、妖魔の種族によっては当然のように餌にされてしまう。
そんな厳しすぎる世界の中での運命的な出会い。いくらジノが天才(自称)だとしても、彼を用いてくれる主がいなければどんな才能も持ち腐れ。その点で、ヴァンパイアの姫テネシーは彼を種族ではなく才能で見抜いてくれた器の大きな主であり、またテネシーにとっても彼は辺境に追いやられていた自らの境遇を変えてくれる希望の光でした。お互いがお互いのことを立たせあい、ともに前に進んでいく、こういうボーイミーツガールが本当好きなんですわ。
ジノとともに過ごしていく中でどんどん彼に懐いていくヘネシーがとても愛らしかったです。不老不死のヴァンパイアのお姫様から永遠に隣にいてほしいって言われるの最高のシチュエーションじゃないですか??


内政に外交に軍事に、次々とその才能を発揮していくジノ。しかし彼の才能にも限界はあり、特にヘネシーの領地自体の周囲との地力の差はいかんともし難いところがある。
ジノは自分を天才だと主張しているけれども、見ている限りではそこまで圧倒的な天才ではないように思えます。全てを見通しているわけでもないし、圧倒的劣勢をなんの犠牲もなく覆すような奇跡的な采配ができるわけでもない。今回ラストの戦いでも、大きな犠牲を払うことになってしまった。
彼は物語開始当初でまだ15歳、公にテネシーの軍師となった時点でも16歳という若さであるし、やたら大人びているように思えても実際はまだまだ成長途中なのでしょう。いつか本当に天才的な軍師へと育ってくれることが楽しみです。
まずはヴァンパイアの国をテネシーのもとに統一するところから。その戦いは次巻から本番といったところですので、ジノとテネシー、そして頼りになるサブキャラ陣のさらなる活躍に期待。


イラストは細居美恵子さん。繊細なタッチの表紙&カラーイラストが素敵でした。
ライバー将軍めっちゃ格好良いな。


神出鬼没の隠密系ヴァンパイアメイド・トレーフルさん激推し。