まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『スピリット・アームズ オブリビオン 君と剣聖少女の未完成な現実』感想

スピリット・アームズ オブリビオン 君と剣聖少女の未完成な現実 (角川スニーカー文庫)

ストーリー
世界で初めて痛覚を搭載したVRゲーム《スピリットアームズ》。そこに入り浸っている高校生、関場宏介の周りには『末次文音』が2人いた。1人はゲーム世界で最大ギルドのマスターであり、聖女と讃えられる少女。そしてもう1人は、入学以来クラスの誰とも話したことがない同級生。相反する2人はとても同一人物とは思えなかったが……。ゲーム内では他の追随を許さない剣士である文音と偶然パーティを組むことになった宏介は、たった2人で碧竜を倒すというクエストを通じて彼女の“秘密”を知ってしまう。その秘密はやがて、スピリットアームズの世界と彼らの現実を揺るがす事件の引き金となっていき――!?

第23回[春]スニーカー大賞<特別賞>受賞作品。とある秘密を抱え切実な願いを込めてVRMMOに入り浸る少女と、彼女のことが気になって仕方のない少年が織りなす、ゲームアクション×青春恋愛劇。
普通のゲーム世界冒険ものかと思いきや、ヒロインの秘密が明かされてから物語は一変。主人公たちとともに、何がなんでも彼女のことを救いたくなる。
ちょっとした切なさが胸を打つとともに、これからを変えることを決意した少女の小さな勇気が熱をくれる、素敵な読後感のお話でした。


VRMMO「スピリットアームズ」に君臨するトッププレイヤーの1人「末次文音」。そして現実世界に存在する謎に満ちた同級生「末次文音」。
2人の関連性が気になる主人公・コースケは、偶然受けたクエストで文音と2人パーティを組んだことから、彼女の秘密を知っていくことに……。
かたやゲーム世界の憧れ、トッププレイヤーでありギルドマスター、なのに他の誰ともパーティを組まない女の子。かたや入学以来誰とも話したことがないという不思議少女。ヒロイン・文音の2つの顔はどちらも謎に満ちていて、だからこそつい覗いてみたくなる。
……という気持ちは分かるけれども、大した反応も得られないのに毎日欠かさず(現実の方で)彼女に声をかけていくコースケのガン押しぶりにはドン引きですよ。めげたり諦めたりすることを知らんのか。すげーなお前……。


コースケが知ってしまった文音の秘密は、予想外に重く切実なものでした。
文音がソロプレイヤーである理由。学校で誰とも話そうとしない理由。そして、ゲームに毎日ログインする理由。
謎だらけに思えた彼女は、その実とても可愛らしく、純粋で、一生懸命に生きている普通の女の子で、だからこそコースケやバロールやイルといった仲間たちと一緒に、彼女のことを助けたくなってしまいます。
こちらとあちらの文音は同じ人物といえるのか、そうでないのか。難しいところだけれども、きっと心の奥底に秘める願いは一緒のはずで。
それを表に出してくれた彼女のため、ゲームの中と現実世界と、両方で懸命に走るコースケの姿が胸を熱くしてくれました。空気の読めない猪突猛進のアホだと思ってたけど、やるじゃんか。
少しだけ前に進んで、一応のハッピーエンドを見たわけですが、これはぜひともコースケと文音の今後が見たいなあ。続刊期待してます。


イラストは姐川さん。キラキラした目の描き方が印象的なイラストでした。
小柄銀髪美少女の上目遣いの破壊力高すぎる……。


イル×バロールも余裕でイケるなこれ。