まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『空飛ぶ卵の右舷砲』感想

空飛ぶ卵の右舷砲 (ガガガ文庫)

空飛ぶ卵の右舷砲 (ガガガ文庫)

ストーリー
人造の豊穣神・ユグドラシルによって人類が地上を追われ、樹獣や樹竜といった怪物がはびこる終末世界。小型ヘリ<静かなる女王号>の副操縦士ヤブサメは、師であるモズとともに、樹竜狩りを生業としていた。そんな中、二人は東京第一空団副長セキレイの窮地を救い、その腕を買われて旧都市・新宿における大規模探索作戦への同行を依頼される。しかし、そこは帰還不可能と称される危険地帯だった――。これは鋼の翼と意志で空を駆り、世界を切り拓く者たちの物語。第12回小学館ライトノベル大賞・審査員特別賞受賞作。

第12回小学館ライトノベル大賞<審査員特別賞>受賞作品。植物の怪物によって人類が地上を追われた世界で、小型ヘリに搭載した右舷砲の一撃で怪物たちを仕留めていくクレイジーな師弟の姿を描くSFアクションファンタジー
面白かった! 海上で細々と暮らす人類と、陸地を闊歩する樹獣や樹竜といった独特な生命体。一度滅んだ世界で戦う者たちのエネルギッシュな生き様。何もかもがクールだ!
魅力的な世界設定とモズを筆頭としたバラエティ豊かなキャラクターたち、迫力のあるアクション描写とが合わさり、実に読み応えのある物語でした。


豊穣神ユグドラシルが生み出した怪物たち・樹獣や樹竜によって人類が陸地を奪われ、海上で暮らすことを強いられている遠未来の世界が舞台。素材として高く売れる樹竜を狩るため、小さなヘリ一機で陸地の空を飛ぶ者たちがいた。
くぅーっ! ロマンですねぇ! 一度滅んだ人類の文明。植物に覆われてしまった都市。迂闊に足を踏み入れれば命が危うい脅威の世界。その上空を駆ける小型ヘリと、そのサイズ感にとても似つかわしくない一発の破壊力だけを追い求めた右舷砲。もうなんだか全てがロマンに溢れていて僕の中の少年の心がくすぐられてしまうよ!
最初の50ページ、挨拶代わりの樹竜との戦いがまず素晴らしくて、一気に物語世界に引き込まれました。恐ろしくも不思議と魅惑的な生き物である樹竜と、主人公コンビ・ヤブサメとモズの乗る<静かなる女王号>との立体的な戦いは、デビュー作とは思えない確かな描写力によって実に映像的に描かれます。迫力とケレン味とが合わさった見事なアクション劇です。
かと思えば、ヤブサメの趣味がかつての陸地で発見された年代物の教科書のコレクションだったりして、SF心をガッチリと掴んでくるあたりもニクい。


東京の空を守る空団の副長・セキレイに依頼され、新宿でのミッションに協力することになった女王号の二人。
主人公のヤブサメはまだまともな少年だけれど、その師匠たるモズは非常に破天荒な人物で、モズが持ち込む問題ごとにいちいち振り回されては呆れたようにツッコミを入れるヤブサメという構図が様式美的で愉快ですね。
他の誰よりも無茶苦茶なんだけれども空の上では誰よりも強く、鋭く、そして圧倒的な存在であるモズ。そして、そんな彼女が(普段の扱いはともかく)一番の信頼を寄せるパイロットたるヤブサメ
この凸凹コンビが、いざ戦いの空では縦横無尽に空を駆け、長大な右舷砲の一発で巨大な樹竜を黙らせていく姿。もうね、めっちゃ格好良いんですわ……。
まっすぐなリーダーシップを発揮するセキレイ副長や、女王号を目の敵にする空団の天才パイロット・ヒタキなど、脇を固めるキャラクターもそれぞれ魅力的。
最初から最後までとにかく楽しさに満ちた作品だったので、今後の展開もたいへん楽しみです。


イラストはこずみっくさん。世界観にバッチリあった雰囲気のあるイラストでした。
ザ・クール美人といった体のセキレイさんがとても好き。


ヒタキちゃんメインヒロインになってほしいマン……。