まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『はぐるまどらいぶ。1』感想

はぐるまどらいぶ。 1 (オーバーラップノベルス)

はぐるまどらいぶ。 1 (オーバーラップノベルス)

ストーリー
アンティ・キティラ! 15歳の誕生日です!! 魔法の使えない、食堂の看板娘だったんだけど! 魔無しにとっての最後の砦、能力おろしで得たスキルは――は、“歯車法”!? なんじゃそりゃぁああ!? “金の歯車”しか、出せないスキルって!? 一度は落ち込んじゃった金の髪の看板娘。でも、両親に超励まされ! 冒険者、目指そうって、決っめまっしたぁぁあああ―――!! ……ん? なんだ? この王冠みたいな歯車?
『――――クラウンギアによる:髪型分析完了。――――"ツインテール"へ移行します。』
「しゃ……しゃべったッッ!?」
突如現れた王冠っぽい歯車“クラウンギア”と、黄金の髪と瞳の少女"アンティ"が織り成す、どこにもない、ここだけの“物語”――――!! アンティの、アンティだけの冒険が今、始まる!

ラノベ人気投票『好きラノ』 - 2018年上期でいきなり1位に躍り出た上、タイムライン上のラノベ読みたち(僕含む)がことごとく存在を知らなかったという、なろう発の超新星
歯車を出す謎の魔法(?)しか使えない女の子が持ち前の明るさと元気と創意工夫で街を救うハイテンションファンタジー
面白かったです! 短文が連続するせいで、かなーり人を選びそうな文章ではありますが、それが逆に文章全体に勢いを与えてくれていて一息に読めてしまいました。


主人公のアンティは15歳の金髪村娘。「能力おろし」で彼女が手に入れたのは、火の魔法でも水の魔法でもなく、どこからともなく歯車を生み出す「歯車法」なる未知のスキルだった!
楽しみにしていたのになんだこの残念スキルは、と泣いてしまうアンティ。でも両親からもらったアイテムと組み合わさって、やたら便利なスキルへと発展を遂げてゆくのです。
基本はアンティの一人称視点でずっと進んでいくのですが、まずなんといっても、このアンティという主人公が非常に魅力的。
魔法の学校では落ちこぼれで、せっかく手にしたスキルも謎の歯車法で、と散々だけれど、優しい両親に恵まれてめげずにまた立ち上がる元気と、街の子どもたちに慕われるまっすぐな正義感と、そしてここぞという場面での勇気を持ち合わせている。エネルギーに満ちたヒロイン像だ。
かと思いきや、呪いの仮面を怖がったり、自分の金髪の美しさに無自覚だったりと、年相応の女の子な姿も見せてくれる。うーん好き。


アンティにあまり学がないせいなのか、彼女の一人称視点はかなり単純な文の連続でできています。台詞回しも同様で、正直描写不足や読みにくさを感じる部分も結構ある。でもいざエンジンがかかったとき。歯車法的にいうと歯車が回りはじめたとき、この文章は劇的に魅力的に変化するのです。
街を襲うモンスター。命の危機が迫る子どもたち。彼らを救うために1人走る、走る、走るアンティ・キティラ15歳。歯車装着済み。「きゅいいいいいいいいん!」と歯車を回してアンティが森の中を滑走する場面の疾走感たるや! アンティの叫びもまた熱い。まさに「叫び」という感じで、こう、ぐわっと胸に迫るものがある。これは、熱烈なファンが付くのもわかるなあ。とにかくハマるとクセになる文章でした。
Web発作品の常で、1巻の終わりはもろにエピソードの途中で切れてしまっています。旅立って早々妙なことに巻き込まれてしまったアンティの明日はどっちだ。続きが楽しみですね。


イラストは杉浩太郎さん。アニメ的でちょっと童話っぽくもあるタッチのイラストですね。
躍動感のある表紙が好きです。アンティかわいいのう。


クラウンちゃんはAI萌えの王道を行ってるな!!