まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『ラストラウンド・アーサーズ クズアーサーと外道マーリン』感想

ストーリー
生まれながらにして、すべてのことが出来すぎてしまうせいで空虚な日々を過ごす高校生、真神凛太朗。暇つぶしのため、あえて“最弱”と呼ばれる瑠奈=アルトゥールの陣営に加わり、来るべき世界の危機を救うため真なるアーサー王を決める“アーサー王継承戦”に参加することになるのだが……。「私のエクスカリバー……売って、お金に換えちゃったから」瑠奈は、聖剣を売り払い、召喚した“騎士”のケイ卿にはコスプレさせて利用したりするロクでなしで!? しかし絶望的な危機に瀕した時、瑠奈は凛太朗さえも認める強さを垣間見せ――。新たなるアーサー王伝説がここに始まる!

羊太郎先生の新作、しかもアーサー王ネタ、ということで喜び勇んで読みました。
現代のアーサー王を決める戦いに暇つぶしのために飛び込んだ露悪的な主人公と、普段はロクでなしでしかも最弱だけれどここぞという場面で王としての器を見せつけるヒロインのコンビがとても魅力的で良い。
相変わらずケレン味のある戦闘描写が素晴らしく、またはいむらさんのイラストの力も相まって、迫力満点のバトルアクションを楽しませてもらいました。


アーサー王の継承者を決めるための「アーサー王継承戦」。
11人の継承候補者たち、それぞれが使役する11人の騎士、そして各々が持つエクスカリバー。うーん中二心がワクワクしちゃうぜ!
アーサー王を元ネタにした創作物はいくつもありますけど、やっぱりテンション上がっちゃいますよね。まあ僕自身は、アーサー王物語は軽くかじった程度なんですけど、それでもね。だってかっけーんだもん。少年のハートをくすぐるロマンが溢れているんだもん。
ケイ卿やガウェイン卿など円卓の騎士たちもキャラクターとして登場してくるんですが、きちんと伝説に沿った活躍をしてくれたりしていてGoodでした。原典をしっかり調べた上で小説のネタとして昇華していく作者の真摯な姿勢が伺えます。


ヒロインの瑠奈は継承候補者ではあるものの、召喚騎士のケイ卿が騎士の中では最弱であり、またエクスカリバーの能力も最弱と言われ、ゆえに最弱の候補者とされる女の子。
しかも金に困ってエクスカリバーを売っぱらってしまったり、ケイ卿(ちなみに女子である)をコスプレで働かせて稼いだりしちゃう残念クズっぷり。
でも、なんだかんだで学園の王の座を守り抜いていたりしていて、人望は抜群にある。それはたとえば、生まれつきの全方位チート能力のせいで周囲から疎まれる主人公・凜太朗を当たり前のように迎え入れる器の大きさだったり、自分が傷ついても自分の下にいる民(生徒たち)を全力で守ろうとする気概だったり、そういう彼女の根底にある魅力からくるものだと思います。
初めこそ暇つぶしのために瑠奈に声をかけた凜太朗が、いつの間にか彼女に絆されてしまったのも、きっと彼女の人一倍純粋でまっすぐな思いに触れたから。最弱でも普段はロクでなしでも、実は他の誰よりも王にふさわしい。そう読者に思わせてくれるだけの魅力を放つヒロインでした。
そんな瑠奈を脱落させるべく迫る強敵たち。幼馴染みのフェリシアはガウェイン卿(強い)を連れて、そしてある男はあの騎士(超強い)を連れて。
絶望的な戦力差の中、瑠奈が誇れる唯一のもの……絆の力。仲間を信じることの強さ。熱い戦いを見せてもらいました。
まだ継承戦は始まったばかり。早くもタレントが揃ってきた感もありますが、候補者も騎士も8人ずつ残っているわけで、次は誰が出てくるのか楽しみで仕方ないですね!


イラストははいむらきよたかさん。毎度ながらアクションシーンが最高です。もう褒める言葉が見つからないよね。
ボロボロになりながらエクスカリバーを振るう瑠奈さん、カッコ良すぎです。震えます。


なおヒロインとしてはフェリシアちゃんが好きです(お嬢様に弱い)。