まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『賭博師は祈らない(4)』感想

賭博師は祈らない(4) (電撃文庫)

賭博師は祈らない(4) (電撃文庫)

ストーリー
バースでの長逗留を終え、ようやくロンドンに帰還したラザルス。リーラは徐々に感情豊かになり、観光がてらついてきたエディス達との交流も続く。賭場の馴染みからは、そんな関係を冷やかされる始末。ラザルスは賭博師として日銭を稼ぐいつもの生活へと回帰していく。
だが幸福そうに見えるラザルスの心を陰らせるひとつの懸念――。リーラという守るべき大切なものを得たが故に、彼の賭博師としての冷徹さには確実に鈍りが生じていた。裏社会の大物や警察組織にも目を付けられつつも、毎日を凌いでいたラザルスだったが……。
そしてかつての恋人である賭博師・フランセスとの因縁が、ラザルスに決定的な破滅をもたらすことになる。

大きく揺らぐ賭博師としての「ラザルス・カインド」。そして最高の好敵手との因縁の対決。
シリーズの根幹をぶち抜くような見所満点・盛り上がり抜群の巻でした。ブラボー。


リーラとともにロンドンへ帰ってきたものの、明確に調子を崩すラザルス。
守るもの、大切なものができたという心の変化。それは人間としてはマトモなことかもしれないけれど、こと賭博師ラザルスにとっては致命的で。
しかもそういうときに限ってこう、街の裏側に潜む顔役に付け狙われたりするんだから、有名になるってのは怖いことですよ。
これまでもそれなりの目に遭ってきたラザルスですが、今回はまた別格の悲惨さでした。物心ついてから培ってきた全てのものがぶち壊されたのだから当然といえば当然かもしれない。飄々と「どうでもいい」とうそぶいていた彼が、まさかこうなるとは予想していませんでしたが、思えばリーラを助けたときから少しずつ何かが動き出していたようにも思えます。
でも僕はさ、フランセスとの1回目の勝負でこの選択をしたラザルスのことがやっぱり好きなんですよ。


義父から教え込まれた賭博師としての姿勢。かつての「ラザルス・カインド」の拠り所。
それを失って、落ちるところまで落ちて、乗り越えて。ラザルスは新たなラザルスとして歩みだす。
待ち受けるのはやはりこの女。どこまでも魅惑的で強く麗しくそして危険な賭博師フランセス・ブラドック。
新生ラザルスのデビュー戦にして後には引けない戦い。相手は互いをよく知るかつての恋人。1巻での対決を彷彿とさせる舞台設定。こんなん盛り上がらない方が無理っちゅーもんです。しかもあの勝負の続きまで持ち出してくるとか、もうほんとずるい。やってくれますわ。
ラザルスが滅びるか、フランセスが堕ちるか。そんな悲しい二択から逃れるために用意された最後の切り札も、もうなんというか最高でしたね。いやラザルスさん、それはちょっとイケメンすぎない?(笑) 綺麗な伏線回収に惚れ込んじゃいましたよ。
それにこの見開きイラスト! いやー僕はこの絵面が見たかったんだなあとしみじみ思ってしまいました。
もちろん僕はリーラ推しですよ! そこは変わらないんだけれど、やっぱりこのふたりの関係も、これはこれでめっちゃいいよねえ。


あとがきを読んで驚愕したのですが次で「本編完結予定」とのこと。となると、描かれるのはやっぱりリーラの行く末ということになりそうです。
個人的にはね、やっぱりラザルスとリーラには共にいてほしいという思いもあります。でも今のラザルスなら、彼女の本当の幸せのために……とかいうこともやりそうですし。
シリーズが終わってしまうのは寂しいけれども、このふたりの物語がどのような終幕を見せてくれるのか今から大いに楽しみです。


ブルース、お前なかなかいいキャラしてんじゃん。