まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『アサシンズプライド7 暗殺教師と業火剣舞祭』感想

ストーリー
「彼女の暗殺係として、そして家庭教師として――この決定に異議はあるか? クーファ=ヴァンピール」「ない」メリダ暗殺決定の命が下された。依頼主、即ちメリダの祖父は、聖騎士でない孫娘のこれ以上の活躍を望まない、と。自身の暗殺計画など知る由もないながら、家庭教師の憂い顔が気がかりなメリダは、武具の祭典・鋼鉄宮博覧会でミュールから勝負を挑まれる。しかもそれは「忘れないで。勝った方がクーファさまと――」想い人の口づけを賭けた勝負で……。逃れえぬ死の刃が迫るとき。暗殺教師と、存在価値を否定された少女は、この世界にいかなる矜持を示すのか。

いよいよ下されてしまったメリダの暗殺命令と、それに乗じた各組織の暗躍、そして緊張感高まる中での三大養成学校が入り乱れた闘技会。
「やっと」とも「とうとう」とも思える、開幕当初から予告されていた展開の中、戦々恐々としつつも読んでみたら、待ち受けていたのはシリーズ最高の盛り上がりでした。
窮地に次ぐ窮地、そして少女は立ち上がる。見たかお前ら、ウチのお嬢さまはこんなにも格好良いんだぜ!!


メリダに対して、祖父・モルドリュー卿が下した暗殺命令。
お嬢さまの教育係でもあり、その実暗殺者でもあるクーファが、いざこの命令が下されてしまったときにどう出るのかは、正直予想できていませんでした。クーファがメリダのことを大切に思っていることは確かだけれど、まさか真正面から命令を無視するはずもないし……。
運命の1日に向けたふたりきりでの秘密訓練。そしてやってきてしまった祭典当日、集団行動を抜け出してのナイショのデート。
それはあたかも残り少ないと分かっているメリダとの時間を惜しむようでもあって、見ているだけで胸が苦しくなってきます。
一方のメリダは、想い人の葛藤もつゆ知らず、恋のライバル・ミュールが切り出してきた「クーファ先生との口づけ」を賭けた勝負のことで頭がいっぱい。
自分の命がたくさんの人間に狙われているというのに、当の本人は年相応の少女の悩みでため息ついてるんだから、まったく微笑ましいったら。


フリーデスウィーデ、ドートリッシュ、そしてジャン・サリヴァン。三校の生徒による闘技会は、やはりというか我らがご令嬢たちの晴れ舞台となりました。
上位位階・ディアボロスの破壊力を存分に見せつけるミュール。一方、衆人環視の中でサムライ位階であることを隠そうとして力の出せないメリダ
ああ、じれったい。メリダが本気を出したらあんなに凄いのに! そんな読者の叫びを代弁してくれたのは、他ならぬ対戦相手のミュールでした。
互いに尊敬しあう友人であると同時にライバルでもある。エリーゼとの間柄ともまた違う、このふたりの絶妙な関係がいい。もしかしたら、この場でメリダに本気を出させることができたのはミュールだけだったかもしれませんね。
刺客による襲撃。共闘するも打ち倒される4人。皆が立ち上がれない中、唯一また起き上がったのは、他の誰よりも多く転んできた少女でした。
ああ、見てください。この、最愛の家庭教師直伝の技の冴えを。痺れました。痺れちゃいますよね……。格好良いよなあ、ウチのお嬢さまは。
ほの甘くて悶えちゃうエピローグもあり、完璧な仕上がりでした。いやー面白さが衰えませんな! しがらみから解き放たれたメリダが今後どんな風に羽ばたいてゆくか、ますます目が離せなくなりました。次巻も待ち遠しい。


シェンファとジンの行く末にどうか幸あれ。