まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『陰キャになりたい陽乃森さん Step1』感想

陰キャになりたい陽乃森さん Step1 (電撃文庫)

陰キャになりたい陽乃森さん Step1 (電撃文庫)

ストーリー
陰キャと陽キャ――俺たちに課せられた、透明な上下関係。お互い理解し合うことはできないし、そばにいても生まれるのは不幸だけ。だから俺は思っていたんだ。陰キャと陽キャは、別々に暮らすべきだと。なんなら、学校やら自治体レベルで、隔離して生きていくべきだと。なのに――そんな俺らが集う通称「陰キャ部」。陰キャだけの安息の地に、彼女はやってきた。陽キャ中の陽キャ、リア充中のリア充、陽乃森さん。しかも、彼女は「陰キャになりたい」なんて言いだして……え、ちょ、本気!?自分が言ってることの意味わかってる!?わかり合えない俺たちの、異文化激突青春ラブコメ!

陽キャのトップオブザトップ、超ハイスペック美少女が陰キャを目指して「陰キャ部」に入部。
懸命な彼女のために陰キャたちが揃ってアイディアを出し、どうにか陰キャに近づけようとするのだけれど、何をしても眩しすぎる陽を消せないあたりが生まれ持ったスペックの差を感じさせる……悲劇だ……。
陽と陰はやっぱり相容れない存在なのか? いや、そうじゃないでしょ、と声高に叫びたくなる青春学園コメディ。


陽の中の陽、自覚なく学園のトップカーストに君臨するスーパーリア充ヒロイン・陽乃森。そんな彼女が引きこもりの妹とお話するために選んだ道は「陰キャ」になることだった!
なんてはた迷惑な! ただ平穏に暮らしたいだけの陰キャたちの集団の中に突然陽キャのトップが舞い降りてくるんだから、そりゃ陰キャ的には超困ります。実際に主人公・鹿家野は一度彼女のお願いを断っているしね。普段から陽キャとの関わりを避けているわけだから、当然といえば当然。
でも陽乃森は、その辺で陰キャを下に見てイキっているリア充とは格の違う超リア充。そもそもスクールカーストの存在にすら気付いていなかったというんだから、これはもう陰とか陽とかではない、特別な生き物だ……。
妹と話がしたいというそれだけのために、ひたむきに陰キャを勉強しようとするその姿は、なかなか胸に迫るものがあるし応援したくなってきます。
しかし如何せん、相手は陽の中の陽。陰キャ部の精鋭たちがよってたかっても、溢れ出るリア充オーラを打ち消すことができないのだ! これが……埋まらない種族の差……! 天然の陽キャこわい……。


生き方が違いすぎる陽乃森と一緒にいることで、陰キャたちの生活に支障が現れはじめ……そして訪れてしまう致命的な瞬間。
いやあ、これはさすがに陽乃森の方に繊細さが欠けていたかなとも思うんですが、正直時間の問題だった感はあります。結果的に陽乃森の望みを叶えることにつながったとはいえ、これで良かったのかなという疑問ばかり残る。
一部の陽キャが陰キャを蔑むように、実は陰キャの方だって心のなかでは陽キャのことを下に見ていたりもして、まあ私もどちらかといえば陰だから、そう思っているフシは少なからずあって。だからこそそれが壁につながっているんだけれど、でも陽乃森のこんな姿を見ていると、やっぱり陽には陽だからこその魅力があったんだなと思い知らされる。
そう気付いたところで動けるのかどうかが、陰キャながらに主人公できるかどうかの分かれ道なんじゃないかとも思います。鹿家野はもちろん……。
終盤の展開は多少急ぎ足だったかなとも思いますが、思わぬ見開き演出なんかもあってハラハラさせてくれました。既にタイトルは回収されてしまっているわけですけど、「Step1」とのことだし、続いてくれるのでしょう。これからはラブ方向に期待ということで。


イラストはBison倉鼠さん。陽乃森さんちょっと胸元開けすぎじゃない? 大丈夫? 風邪引かない?(オカン目線)
理子ちゃんのイラストもぜひカラーで見たい。


これがスク水界隈のプロの人ですか。