まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

剣と炎のディアスフェルド

剣と炎のディアスフェルド (電撃文庫)

剣と炎のディアスフェルド (電撃文庫)

ストーリー
大国アルキランから侵攻を受けたイアンマッド王国は、和議を引き換えに兄王子ルスタットを人質として差し出す。
残された弟王子レオームは、兄が戻るまで国を守ると誓うが、父王の暗殺に老臣の反乱と次々に危機が襲う。
一方生まれついての英雄ルスタットは敵地にあっても尚、その剣と勇気と不死身の体で着実に名声を高めていく……。



兄と弟、二つの道に分かたれた王子のそれぞれの活躍を描くファンタジー戦記。
面白かった! 最強の剣士でありながら王としては未熟な弟と、敵国の人質でありながら英雄として名を馳せていく兄。
戦記物と冒険物の両方の側面から楽しめる、贅沢で読み応えのある1冊でした。


第一部は弟王子レオームがイアンマッド国王として即位するまでのお話。
ルスタットがいなくなってから、国王が暗殺されるわ、周辺国とは緊張状態だわ、家臣の重鎮が反乱するわといきなり波乱だらけ。
剣の腕は達人級ながら、国王に即位するのはためらうなど大事なところでの決断が鈍いレオーム。しかしそんな彼を、周囲の人々が支え、見守り、時には敵対することで、王となるべく成長を遂げてゆくのです。
レオーム自身もなかなか渋くてカッコいいのですが、イアンマッドの家臣団がまたいい味出てますね。
特に、レオームの初めての直属の部下となった覚悟の騎士フィーリ! 父の遺志を受け継ぎ、主と定めたレオームのために自らが泥を被ることも辞さないその鮮烈な振る舞いから目が離せません。
元隣国の嫡子でありながら実は女性ということで、ヒロインとしても非常に魅力的でした。過激でクールな男装の部下ヒロイン……いい……。


第二部は兄王子ルスタットのアルキラン国内における冒険を描いたお話。
弟に比べると明らかに正統派主人公といった感じのルスタット。少年従者のランムスとともに、アルキランの客将として国内の事件を鎮圧していく姿は、既にして将来の成功を約束されているかのよう。
エピソードも巨大獅子退治や異国の女王との一騎打ちなど、第一部に比べるといかにも冒険譚や伝説という感じで楽しい。
森に囲まれた自然豊かなイアンマッドと、文化と技術の発展したアルキラン、神の扱いや作法まで細かな違いが描かれているのですが、それがそのままルスタットとランムスの見方の違いにも表れていて、物語世界の広がりを感じさせてくれました。
生き別れになったまま、それぞれの道を歩みだしたレオームとルスタット。志は同じくしていながら、早くも今後どこかで両者の道がぶつかりそうな予感がしていて、大いに不穏なものを感じます。
個人的には、完璧な英雄に見えるルスタットよりも、弱さや人間らしさの感じられるレオームの方を応援したくなるのですが……。ともかく、二つの道がこれからどのように交わっていくのか、不安であり楽しみですね。


イラストはPALOWさん。男性陣がえらく渋く描かれていて惚れぼれしちゃいます。
でも一番格好良いのはフィーリ。研ぎ澄まされた視線で斬られそう。


クリューシア様の再登場を願う……!