彼方なる君の笑顔は鏡の向こう
- 作者: 持崎湯葉,sekiyu。
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/09/30
- メディア: 文庫
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兎下詩歌の幼馴染・音和彼方は、表では品行方正で容姿端麗、でも詩歌と二人きりの時だけ怠け者な女の子。
ある日彼方が神社にあった古い鏡にぶつかると、中から3人の少女が現れる。
3人は彼方が持つ感情の化身で、それを失った彼方は詩歌との記憶をも失ってしまったのだ……。
友達以上恋人未満、ベッタリな幼馴染の感情が3人に分裂! 4人になった幼馴染との恋に思い悩む青春恋愛ストーリー。
もうほとんどくっつきそうな男女に、さらなるドラマを生む。持崎湯葉先生はこういうのが上手いよなあ。
予想していたエンディングとはだいぶ異なる終わり方で、そっちで来たかーと。ハッピーエンドだけれど切ない。
絵に描いたような優等生でしかも美少女と、文句の付け所のないパーフェクトな幼馴染・彼方。
しかし心を許した主人公・詩歌の前でだけは、だらしない怠け者の「駄彼方」になってしまうのだ!
表立って付き合ってはいないけれどそうなるのも時間の問題、そんな状況は、彼方が神社の鏡に激突することによって脆くも崩れ去るのでした。
彼方の詩歌への想いから生まれた「うなた」、詩歌との記憶から生まれた「きなた」、そしてなぜか食欲から生まれた「しなた」。
記憶を失った彼方本人と合わせて4人の「元・彼方」な女の子たちとのドタバタラブコメ生活のスタートです。
初めこそ、早く元の彼方に戻ってほしいと思っていた詩歌。
しかし、3人の少女と共に暮らすうちに、次第に彼女たちを大切に思う気持ちが芽生えてきてしまいます。
さらには、うなたはもちろん、きなたやしなたまでが詩歌への恋を自覚しはじめてしまって、でも彼女たちは元々1人の人間だし、思いが混線しあって大混乱。ハーレムなのに一対一という、奇妙な構図がおかしくもあり、妙に切なくもあり……。
このまま別々の人間として詩歌と一緒にいることを願うのか。それとも、愛する詩歌の願いのために、彼方のいち感情に戻ることを選ぶのか。
どの道を選んでも、ひとつの恋は成就するけれど、別れは避けられない。そんな選択肢の中、詩歌と彼方の選んだ結末は、ちょっと予想外のものでしたね。
笑顔があるから、ハッピーエンドには間違いないんでしょうが、やっぱり少し胸が痛みます。でも、ふたりは選んだんだ。自分たちのこれからを。そのことに拍手をしつつ、今後の幸せを祈りたい。
イラストはsekiyu。さん。彼方+3人の顔が描かれた表紙が印象的ですね。
表紙と口絵しかイラストがなかったのはちょっと残念。
なお個人的にはしなたが好み。