まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

虚無の魔王、創世の英雄姫

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ストーリー
反乱で国を追われた小国の姫・エレノーラ。
奪われた国を取り戻すべく、彼女は千年間封じられていた魔王リュウトの力を頼ることを決意する。
かけられた隷属魔法を解除するために、不本意ながらもエレノーラに協力するリュウトだが……。



古の魔王を復活させた亡国の姫が国を取り戻すために戦うファンタジー。
一本芯の通った主人公の姫と悪を標榜しながらも姫に協力する最強の魔王の凸凹コンビが魅力的な作品でした。
魔王は、かつて世界を蹂躙したにしては少し「いい奴」すぎるような気もするけれど、この全能感は素直に爽快ですね!


宰相が起こした反乱によって父王や家族を喪い、命からがら逃げ出した亡国の姫・エレノーラ。
勇者の血を引く彼女は、かつてその勇者が封印したという最強最悪の魔王・リュウトを復活させ、彼の協力を得て国の奪還を目指します。
どこまでもまっすぐなエレノーラと、悪と恐怖の象徴たるリュウトは、対照的なふたりの主人公といった具合。
儀式の際にかけてしまった隷属魔法のおかげで一緒にいることができるけれど、そうでなければ即刻命を脅かされてもおかしくない……そんな魔王が相手ですから、旅を始めてしばらくはなかなかにギスギスした雰囲気が続きました。
世界を恐怖に陥れた魔王がこんなお姫様の言動に振り回されているのは可笑しみもあり、どこかで爆発するんじゃないかと空恐ろしくもありますね……。


旅の中で次第に見えてくるのが、か弱き姫に思えたエレノーラの強さです。
リュウトには殺しを厳禁し、あくまで目指すのは仇討ちではなく奪還なのだとする、潔癖なまでの高潔さ。
またそれとは裏腹に、エルフの族長とは自分の命を懸けて譲歩と脅しを織り交ぜた交渉をしてみせたりもする。
ひと言では善とも悪とも捉えられない、ただ自分の信念に依って突き進む。頑固なところと器の大きなところを併せ持つ、そんなところがどんどん魅力的に思えてきて、これでは魔王がコロッといっちゃうのも仕方ないかなと……。
そんなリュウトも、確実に悪ではありながら彼なりの流儀を持っているようで、何を考えているのか分からないなりに格好良いところを見せてくれたりするんですよね。
何せ魔王ですから、いざ戦いになれば文字通りの無双。様々なピンチに巻き込まれるエレノーラを華麗に救いだすリュウトの姿は、見ていて非常に気分がよかったです。
なんだかんだで良きパートナーとなりつつある両者。お話は綺麗に終わっていますが、もし続くなら、ぜひ今後のふたりの活躍も見てみたいものですね。期待しています。


イラストはすし*さん。サイクロプスの前に立ちふさがるリュウトさんがカッコ良すぎて惚れちゃう。
あとベルゾの小物感嫌いじゃないです。


エレノーラもロシェルも可愛いけど作中一番の萌えキャラはドラゴンで確定だ!