ステージ・オブ・ザ・グラウンド

ステージ・オブ・ザ・グラウンド (電撃文庫)

ストーリー
独自で野球チームを結成し、エース・剣の魔球スライダーに夢を見た小学生時代の楠田幸斗。
しかし夢は夢のまま、剣は転校していってしまい、チームは自然消滅してしまう。
高校生になっても野球部にも入らず、腐ってばかりの毎日を送る幸斗だったが……。


幼少期に夢を見せてくれた奇跡の投手との運命の再会。一度は野球から離れた少年たちが再び走りだす姿を描いた、蒼山サグの高校野球ストーリー、幼女は出ないよ！
期待以上に熱くストレートな野球モノをやってくれていてよかったです。バッテリーの信頼関係がいいんだなあ。
幼なじみのヒロインは最後しかデレないのに可愛すぎてずるい！


小学生時代に結成したチームが空中分解してしまった苦い経験から、野球に打ち込むことをやめてしまったふたりの少年、幸斗と卓。
しかしそんな彼らの前に、かつて夢を見せてくれた奇跡の投手・剣が再び現れる！
無邪気にまたみんなで野球をやろうとする剣に対して、幸斗も卓もすっかり「野球はもういい」と思ってしまっていて、変わってしまった幼なじみたちの関係が、切なく突き刺さってきます。
でも、剣の魔球をまた間近で見て、また熱くさせられて。実は幸斗にも卓にも、心の奥底には野球に対してくすぶっていた火種が残っていて。
もしかしたら、もう遅いかもしれない。それでも夢を追いかけたくなってしまったら、走りだすしか仕方ない。一度認めてしまえば、驚くほど生活に彩りが出てきて、ああ、なんだかんだでやっぱりみんな野球が好きだったんだなと、不器用な少年たちの姿に胸がほっこりしてくるのでした。


もう一度野球を始めることを決意したものの、高校の野球部は途中入部禁止。
でも他にきちんと野球をできるところはないから、ここはスポ根らしく、入部を賭けて野球勝負で決着ですよ！　そうそう、こうでなくちゃね！
剣のナチュラルスライダーはまさに魔球。変化はものすごいけれど、決まったところにしかコントロールが決まらないし、そもそもストレートがろくに投げられないなかなか大変な投手です。
そんな彼の女房役になれるのは、幼き日にも捕手を務めていた幸斗だけ！　他の誰にもキャッチングできない魔球だけれど、幸斗だけは剣のことを信じているから、ストライクゾーンにミットを構えて待っていられる。剣も、そんな幸斗のことを信じているから投げられる。
再会したばかりだというのに、長年の付き合いのような信頼関係を見せるかつての幼なじみふたりの姿に、グッと熱くくるものがありますね……。
そして、幸斗、剣、卓の他にも、あの頃共に夢を見た仲間たちが。今は野球部に入っている朋彦と、すっかり疎遠になってしまった幼なじみの少女・渚なんですけど、このふたりがまたいい味出してるんですわ。
特に渚は、ずっとツンツンしていて幸斗たちとの会話さえあまりなかったのに、最後の最後になって一気にデレるもんだから落差が凄い。っていうか超可愛いんですけどこの子。一番ずるいのはお前だろ！
球児たちの二度目の夢はまだ始まったばかり。この夢がどこまで届くのか、続きが楽しみで仕方ありません。


イラストはひのたさん。この表紙、めっちゃ良くないですか……？
口絵も素晴らしかったです。夏を感じさせてくれるね！


アザナエルさんいいキャラしとるわ。