まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

ヒイラギエイク

ヒイラギエイク (ガガガ文庫)

ヒイラギエイク (ガガガ文庫)

ストーリー
中学二年生の夏休みの間、田舎の叔父の家に預けられることになった出海。
村に4人しかいないという同学年の女の子たちと毎日楽しく騒がしい日々を送る。
思いを通わせた少女・美音と、来年また会おうと約束して村を離れる出海だったが……。



第10回小学館ライトノベル大賞<優秀賞>受賞作品。
4人の女の子と過ごした田舎でのひと夏。もう一度君に会いたい、切ない思いが爆発する少年少女の青春ストーリー。
女の子たちと過ごすきらきら輝いた中学二年の夏休みは、たっぷり時間があるようでその実あっという間。
村の掟や大人たち、強い力に翻弄されてあの子に会うことを許されない少年の、それでも交わした約束を信じてひた走る姿に胸を打たれました。


両親の離婚調停の間、夏休みを利用して叔父の住む田舎に預けられることになった中学二年生の少年・出海。
そこで彼を迎えたのは、個性豊かな4人の同学年の女の子、美音、朝陽、燕、蓮華でした。
出海の住む東京とは違って娯楽施設も何もない限界集落。だから、遊ぶといったら自然の中で!
毎朝迎えにくる同い年の女の子たちと、虫取りしたり、川遊びしたり、山に登ったり、本当に遊びっぱなしの毎日が最高に楽しそう。
中学二年生というと、そろそろ思春期だし、異性と遊ぶのにも抵抗がありそうなお年頃。でもそこは田舎の子らしくというか、変にスレていなくていい意味で子供っぽく、無邪気に接してくる女の子たち。これは男子としてドキドキしないほうがおかしいよね!


そんな楽しい日々の中、部外者である出海には教えてくれない謎の村の掟の存在が、不穏な影を落としていきます。
また来年の七夕に会うことを約束したけれど、本当に会うことができるの? そんな不安は、案の定的中してしまうのです……。
掟を受け入れて長年過ごしてきた村の人々と、そんな掟なんかは関係なく、とにかく彼女に会いたい外の人間の出海。
もちろん出海は子どもで、相手は大人たちの集団で、ひとりで何かできるわけではないのだけれど……。
出海のため、そして何より美音のために、村の人間ながらそっと背中を押してくれる朝陽たち3人の女の子にグッときました。
まだハッピーエンドを迎えたわけじゃない。でもきっと、そう遠くない未来にそれは訪れる。そう信じたくなる、ちょっぴり切ない味わいの読後感が素敵です。


イラストはやすもさん。田舎の広い世界を思わせる表紙がとても魅力的。
蓮華さんはガチでデカいな……。


川の水で冷やしたコーラがめちゃくちゃうまそう。