まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

曾々木小夜子の甦る世界

曾々木小夜子の甦る世界 (講談社ラノベ文庫)

曾々木小夜子の甦る世界 (講談社ラノベ文庫)

ストーリー
「汚れなき世界」の実現を図ったトオルとの出会いから1ヶ月。
リトたちは奇源<咎の木>によって虚構世界の遊園地に閉じ込められてしまう。
遊園地内に隠れている奇源を全て見つけ出さなければ世界が滅ぶというゲームに無理やり参加させられる一同だったが……。



世界の存亡を賭け、異界の遊園地で永久に続く「奇源」探しゲーム!
前巻で残した謎や、やり残したことなどを全部詰め込んだような1冊になっていました。
ブコメにおいて「選ばれなかった」ヒロインの行く末がめちゃくちゃシビアに描かれていて辛い……。特にやっぱり、トオルちゃんの想いが切なすぎてキツいですね。


<夢の木>の騒動から1ヶ月。リト、小夜子、トオル、栞、香織、兄貴、会長の7人は、奇源<咎の木>によって虚構の遊園地に閉じ込められてしまいます。
脱出する方法は遊園地内に隠れている奇源を見つけ出すことのみ。制限時間はリトの寿命が尽きるまで。達成できなければ世界は崩壊……。
永久に繰り返される8時間。ヒントもろくに与えられない中、世界を賭けた7人と奇源の壮大なかくれんぼが始まるのです。
さて、負けたら世界が滅ぶとはいえ、制限時間は(一応)たっぷり。初めのうちこそテンポよく奇源が見つかっていって、会長や兄貴も現実世界に戻れて、この分なら大丈夫そうかと思っていたのだけれど……。


栞先輩にまつわる奇源のあたりから、お話の焦点はリトの「罪」へ。
まだ正式な恋人ではないけれど、リトと小夜子は両思い。今回も遊園地で存分にイチャイチャを見せつけてくれて、またその小夜子が最高に可愛くてたまらないんですが……。
そのことを知りながらも、栞先輩や香織、そしてトオルは、リトのことを想う気持ちを止められないのです。
主人公に選ばれなかったヒロインは、何を思い、どれほどに苦しむのか。それを<咎の木>から突きつけられて、少女たちの絶望を知るリト。
これはね、キツいですよね。好きな人が1人を選んで、それでハッピーエンド! とすっきり終われるわけがないんですよね。<咎の木>によって見せられたリトと少女たちの未来がえげつなさすぎてもう……。かといって、みんなを愛せばいいのかというと、それも何か違う気がするし。
止まった世界の時間。もはやリトだけが残された世界の中、ただ対話をして考え続けて、何か彼なりの答えを見つけられたのでしょうか。そうであると信じたいものです。
いやはや、もう少し軽めの内容かと思って読み進めていたら、終盤の怒涛の展開には驚かされました……。力のある物語だと思いますし、あとがきによれば何やら次巻の構想もあるようですので、ぜひ続刊を! 期待しています。


今度こそ兄貴の能力が開花すると思っていたのに!