まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

穿天のセフィロト・シティ

穿天のセフィロト・シティ (電撃文庫)

穿天のセフィロト・シティ (電撃文庫)

ストーリー
地表遥か上空に生きる樹層都市の人間に定められた命の残量《デッドタイム》は72時間。
絶命へのカウントダウンをリセットする唯一の方法は、《生命樹》から生まれる《罪獣》を倒して得られるりんごを口にすること。
《罪獣狩り》である如月キサキは、行方不明者の捜索のため、妹のユイハ、相棒のロウナと共に禁域へと足を踏み入れるのだが……。



寿命が72時間となり、生きるためにりんごを食べ続けなければならない人類の戦いを描いたバトルアクション。
72時間の寿命、人間ひとりひとりに与えられた「罪匣」、セフィロトの階層ごとに分けられた格差社会……等々、世界設定がなかなか好みでした。
ストーリー的にはボーイミーツガールなんですけど、ヒロインはむしろ妹の方? ツン強めながら実はお兄ちゃん愛に溢れた妹で可愛いです!


世界を生命樹に支配され、生命樹の幹に作られた樹層都市に住むことを余儀なくされた人類。
生命樹から生まれる罪獣と戦うため、力を秘めた箱「罪匣」が人間ひとりひとりに与えられ、その代償として人間の寿命は72時間となった……そんな世界が舞台。
命の残量を72時間に戻す方法は、生命樹から生まれるりんごを食べることのみ。人類に欠かすことのできないりんごを手に入れるため、生命樹にほど近い禁域に潜り込み、罪獣と戦う「罪獣狩り」の少年・キサキが今作の主人公です。
なんといってもこの世界設定がいいですね! 遠未来SFともいえる壮大な世界。十二の都市階層ごとに厳格に定められた階級制度とか、中二心くすぐってくれるじゃないですか。


妹のユイハ、相棒のロウナとともに入った禁域で、命の残量が無限大の少女マリアと出会ったキサキ。
何かと謎の多い世界ではありますが、中でもマリアは特に謎めいていますね。公安局とも並々ならぬ因縁がありそうだし……。
罪獣という分かりやすい暴力。そして人間たちが構築した権力や階級制度といった暴力。
弱小クランの一員でしかないキサキには、それらの暴力から周りの人を守るには限界があって、それでも手の届く大切な人だけは守りたい。妹への振る舞いなど、情けないところも多い兄ではありますが、困っている人を放っておけないという性分だけは主人公らしくて好ましく思います。
そんなキサキ自身も、とある重い過去を抱えた少年です。その過去がきっかけとなってユイハとぎくしゃくしてしまっているわけなんですけど、他ならぬ妹のために自分から彼女を遠ざけたい兄と、本音では兄と一緒にいたい妹とのすれ違いが切ないですね。
ユイハは兄と違って公安局のエースだし、かなりのツンツン妹なんですが、言動の端々から兄が大好きだということが伝わってきて、とても可愛らしいのです!
今回の事件を通してようやくお互いと向き合えるようになったので、これからは思う存分いちゃいちゃしてもらいたいと思います(笑)。


イラストはぽんかん(8)さん。有無をいわさぬ魅力を放つイラストですよね、ほんとに。
バトルシーンもぜひどんどん描いてもらいたい!


なぜキサキはウエディングドレスを携帯しているのだろう……。