まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

いもーとらいふ<上>

ストーリー
妹から宿題の絵日記を手伝ってほしいと頼まれた十歳の夏。
三歳違いの兄と妹の関係が始まったのはそのときだった。
兄にべったりな妹に、過保護気味につきあってやる兄という生活は、中学・高校を過ぎても続いてゆき……。



入間人間が描く、妹のことを少々愛しすぎた兄と、兄だけを見てきた妹の、いつまでも続く同居生活。
上下巻の上巻となる今回描かれたのは、なんと妹が0歳から25歳となるまで! まさかタイトルに偽りなく一生を描くつもりなんじゃ……。
世間的に見れば、ちょっとばかり歪で危険に見えるかもしれない兄妹関係。でも誰より大切な存在が一番近くにいて、相手もそう思ってくれているのならば、それは素敵なことなんじゃないか。悩み苦しむ姿も描かれるけれど、確かにそう思わせてくれるだけの幸せがあるお話でした。


妹が生まれたときからしばらく、妹とうまく関係を構築することができなかった兄。
そんな兄妹の間に関係ができあがったのは、兄10歳、妹6歳の夏のことでした。
きっかけは、夏休みの宿題の絵日記を手伝ったこと。兄の部屋だった部屋は兄妹の子供部屋になり、同じ部屋で一緒に過ごす生活が始まるのです。
いやあ可愛いですね、妹ちゃん。他に頼るものもなくって、いつも兄にべったりで、これはついつい甘やかしてしまうお兄ちゃん心理もわかるというもの。
3歳差というのがなかなか絶妙で、双子や年子のような気安さでもなく、かといって大人と子どもというほどに年が離れているわけでもない、お互いに子どもでありながら、守り守られる関係でもある年の差なんですよね。


小学生だったら、同じ部屋で寝るのも、友達と遊ぶよりも妹と一緒にいることを優先するのも、まあまだ自然なことかもしれません。
でも彼らの場合は、それが中学、高校と続いていくのです。大学に入って一旦離れても、3年後には兄の住むアパートに妹がやってきて同居を始めちゃったりするのです。
ここまできたら、もうさすがに言い訳がきかないというか、一般社会的にははっきり不適切な関係っぽく見えてしまいますね。事実、それが理由で彼女にも振られちゃったわけだし。
でも周りがどう思おうと、兄と妹だけは変わらない。兄が妹を愛し、妹が兄を愛することになんの問題があるというのでしょう。それは決してみだらな関係ではなく、どこまでも純粋な家族愛。ただ、他の人に向ける愛よりもそれが圧倒的に大きいだけのお話。
兄が社会人となって働きに出かけ、妹は兄の弁当を作り、掃除をして、兄の帰りを待つ。休みには一緒におでかけする。一緒にいることが楽しくて落ちつく。もう、人生の幸せってここにあるんじゃない? という感じ。いいなあ。
頼りない妹を守る兄と、過保護な兄に守られる妹。しかしそんな関係が、ここにきて崩れようとしています。
夢の尻尾を掴みかけた妹。一方、自分のアイデンティティになりつつある兄の姿を失いかける兄。お互い、少なくとも身体は大人になり、これからの兄弟関係がどう移り変わってゆくのか。下巻が気になって仕方ありません。ここまできたら、最後まで描ききってほしいですね! 期待しています。


イラストはフライさん。妹がとにかく可愛く描かれていて最高です。
緩いピースマークの1枚とか可愛すぎるのでは? 抱きしめたい……。


「回りくどい文章とかややこしい比喩」が大嫌いな主人公に思わず笑ってしまった。