まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

女の子が完全なる恋愛にときめかない3つの理由

ストーリー
男女の恋愛感情を利用して学内で莫大な利権を得ようと目論んだ神崎京一。
しかし彼は仲間の裏切りにあい、所属サークルを追放されてしまう。
この学校には、男子には見えない恋愛に関する“女子の裏ルール”が存在していたのだ……。



女子たちと生徒会によって恋愛のルールが管理された学園で、再びのし上がるために戦いを挑む少年と少女のお話。
学内エリート女子の恋愛は、金と地位と利権によって全てが動く……シビアな恋愛の闇に背すじが凍りそう!
恋愛コンペや、男女の交流を図る仮想空間、さらにはAI搭載アンドロイドとの恋愛シミュレートなど、様々な形で描かれる恋愛が実に面白く興味深く、そしてエグかったです。さすが土橋先生や!


学内SNS管理サークルの部長を務めていた京一は、学園の最大のタブー・恋愛の管理に手を出してしまったためにサークルを追いやられてしまいます。
そう、この学園の恋愛には女子だけしか知らない堅固なルールがあり、そして学内の恋愛で利権を貪る裏の集団が存在していたのです!
恋愛コンサルタントの下に次々と集まる女子たち。彼女たちは厳格に査定され、そこに格差が生まれ、札束が飛び交う。そして男子は何も知らない……。
そこには、思いを育んで告白してお付き合いして、なんていう清純な恋愛の姿は全くありません。怖いよ、怖すぎるよ。この学校にいたら女性不信になりそうだよ……。


唯一自分についてきてくれた元雑用係の少女・夕凪と新興恋愛コンサルタントを立ち上げた京一。
記憶喪失の女子の彼氏がどちらだったのか競う「恋愛コンペ」に参加したり、ネット上の仮想空間「アニマル村」で恋愛の活性化を図ったり。
やってること自体は、冷静に考えるとかなりトンデモなんですが……。恋愛コンペの皮肉な結果や、アニマル村に「裏」を作ったことによる顛末など、妙に生々しいリアリティがあって心をえぐってきますね。
しかしこの学園の恋愛の闇はそんなものに留まらない。またしてもやりすぎた京一は、生徒会の手によって「監獄」へ送られちゃったりするのです。ここへきて、もう恋愛の話なのかそうでないのか分からなくなってきました。エリート女子たちが娯楽で監視する監獄ってなんなんだ……。ちょっとドキドキしちゃうだろ!
京一が地上へ出るための試練のひとつとして描かれた、AI搭載アンドロイドたちとの恋愛のエピソードは特に好きな話です。
100人のアンドロイドの中から恋人を選ぶ。アンドロイドたちは京一の趣味に応じて体系化し、そして競争が激化していく……。ロンドといいアクアといい、あまりに切ない恋模様にこれだけで1冊やってもらいたいくらいでした。
さんざんな形の恋愛にばかり触れてきた京一。未来と破滅が待ち受ける最後の試練で、彼が電話をかけたのは……。
京一が見つけたものが愛なのか否か。その答えはふたりだけが知っています。正直力技のような感じはするけれど、なんだかんだでジンとしてしまったから私の負けですね。悔しい!


イラストは白身魚さん。もはや鉄板コンビですね。
とても可愛らしい絵柄なのに、場面によってはえらく不気味に見えるから不思議なのです。


他のどの女の子よりも可愛い最強ヒロイン・自動販売機。