まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

幻獣調査員

ストーリー
独自の生態と超自然の力を持つ生き物、幻獣。
彼らと人の衝突が増えたため、国家は幻獣を調査し、時には駆除をする専門家を定めた。
そのひとりである調査員のフェリは「人と幻獣の共存」を胸に旅を続ける……。



「蝙蝠」と「闇の王」を相棒に、人と幻獣との共存を夢見て旅する少女の連作短編集。
面白かったです。竜にバジリスクにマーメイドといったメジャーな幻獣たちと人間にまつわる事件の数々は、ときに優しく、ときに悲しく、ときにウイットの効いた結末を見せてくれて、読み応えのある1冊でした。
少女と相棒たちの、互いに互いを信頼している関係性が素敵ですね。


世界の至るところに住むファンタジックな生物たち、幻獣。
国が定めた「幻獣調査員」である主人公・フェリは、人と幻獣の間で巻き起こってしまった諍いや事件の数々を調停しながら旅をする不思議な少女です。
彼女の相棒はホムンクルスの蝙蝠・トローと、影に潜み闇の力を操る兎頭の紳士・クーシュナ。
マスコット的可愛らしさのトロー、戦いにおいて絶対的強さを誇るクーシュナは、それぞれフェリのことが大好き。もちろん、フェリの方も彼らのことが大好き。
幻獣と人の争いが絶えない世界の中、幻獣のことを愛し幻獣に愛される少女の、浮世離れした純真さや無垢さが魅力的でした。


最初のエピソードはとある村が飛竜に襲われてしまうお話。飛竜の行いのひどさばかりを語る村人たちですが、飛竜が暴れるのには理由がありました。
クーシュナの力があれば、竜種であろうと捕縛し駆除するのは可能なこと。でも、それでは人間側からの一方的な視点だけで事件を解決することになってしまう……。
漁師と恋に落ちたマーメイド、人間を無差別に襲う危険な水棲馬、乙女を攫うライカンスロープ
意志の通じる幻獣もいれば、存在自体が害となる幻獣もいて、人間が悪いのか幻獣が悪いのか、悲しいのは人間か幻獣か、事件ごとにまるで違う雰囲気を見せるエピソードの数々は、我々読者を飽きさせずに読ませてくれます。
比較的長めのお話の合間に語られる「バジリスクの卵」や「妖精猫の猫裁判」といった掌編がまたユニークで楽しいですね。シリアスな事件だけでは疲れてしまいますから、こういったコミカルなエピソードを挟んでくれるのは嬉しいです。
フェリ、トロー、そしてクーシュナ。摩訶不思議な3人(?)組の冒険がどのような形で続いてゆくのか、ぜひ続きが読みたいです。期待しています。


イラストはlackさん。表紙のデザインがとにかく素晴らしい!
クーシュナがめちゃくちゃ格好良いですね。


猫耳フェリさんは正直狙いすぎ……可愛い!