まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

異世界とわたし、どっちが好きなの?

ストーリー
異世界ハーレムを夢見る高校生・市宮翼は、クラス一の美少女・鮎森結月と本屋のラノベコーナーで遭遇する。
同じ『異世界厨』同士、異世界トークで盛り上がる翼と結月。
その帰り道、ふたりはそれぞれトラックにはねられかけ、異世界に行くチャンスを与えられるのだが……。



異世界転生ファンタジー……に見せかけた、異世界好き隠れオタク同士の学園ラブコメ
ああ、これは、素晴らしかったです。暁雪先生はほんと、単巻ラブコメの名手だ。
決して奇をてらうことなく、出会い、距離を縮め、お互いに好きになっていく過程を、本当に丁寧に描いてくれるからこんなにもハートに刺さるんですね。


異世界ハーレムを夢見る主人公・翼と、同じく異世界オタクにしてクラス一の超絶美少女・結月。
ぼっち同士で異世界好き同士、偶然にも意気投合したふたりは、ある日それぞれトラックにはねられかけ、異世界行きのチャンスをゲット!
しかしふたりともぼっちすぎて異世界に行くためのポイントが足らず、女神からのミッションを10個クリアすることで、異世界行きを叶えてもらうことになるのでした。
ところがこのミッションというのが、「クラスメイトと三分間会話する」だとか、「クラスメイトとお弁当を食べる」だとか、ぼっちにとっては超難問(笑)ばかり。
困った翼と結月は、ふたりでお互いのミッションをクリアし、異世界に行くための同盟を組むことにするのです……。


いやあ、いいですね。秘密の共有と同盟から始まる恋物語。元々話がめちゃくちゃ合う相手同士で、こんな協力関係になってしまったら、そりゃ好きになっちゃいますよね。恋、しちゃいますよね。
しかも、「名前で呼ぶ」だの「ハグする」だのと、くっつくためのお膳立てをミッションがやってくれちゃっているんだから、なんというか話が早い。
文化祭を成功させるというミッションで、ぼっちながらに実行委員に立候補して、ふたりで居残って作業をする。テストで平均点以上を取るというミッションのために、ふたりきりの勉強会を開く。
そんなことをやっているうちに、いつの間にかふたりでいることが当たり前になってきて、相手のことを好きになってしまっている……。
結月のことを好きになってしまったけれど、そんな思いが結月の異世界行きの邪魔になってはいけないと、必死でひた隠しにする翼。そんな翼の態度をいぶかしむ結月。
結月のためを思ってのはずの嘘が、逆に結月を傷付け、はじけて破綻してしまう……。本当は好きあっているふたりがすれ違う姿には、胸がぎゅっと切なくなりました。
最後にタイトルの台詞を持ってくるのも、ベタだけど熱い! 変わったことをするのではなくて、あくまでド直球にラブコメディ。だからこそ、こうしてクるものがあるんですね。
いやはや、前作もそうでしたが、暁雪先生の単巻ラブコメはめちゃくちゃ楽しくて、満足感があって、大好きです。次はロリヒロインの話ということで、次回作も楽しみに待ちたいと思います。


イラストはへるるんさん。結月の色んな表情が見られて、どれも可愛くてよかったです。
あと口絵の女神さまの格好が予想以上に危険。


肘で横乳をつつくだけの仕事とかそんなん誰にとっても天職だわ! 爆発しろ!