まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

小和田くんに隙はない? 飯田さんの学園事件簿

ストーリー
気になることはとにかく首を突っ込みたがる飯田さんは、今日も小和田くんに無理難題をふっかける。
クールだけれど飯田さんを放っておけないことには定評のある小和田くん。
ふたりは今日も学園に起きた謎の事件に巻き込まれていく……。



友達もほぼいない地味な少年・小和田くんが、幼なじみの飯田さんの頼みだけは断れずに学園にまつわる謎を解いていく学園ミステリー!
持ち前の好奇心で奇妙な事件に首を突っ込んでいく飯田さんと、彼女に頼まれて渋々事件解決に付き合う小和田くんというふたりの関係性が最高でした。
ミステリーとしてはひとつひとつの事件は弱めかもしれませんが、その裏の人間ドラマに味わいがあってよかったですね。青春だ。


家が隣同士で生まれたときからの幼なじみ、小和田くんと飯田さん。
飯田さんは、気になることがあるとすぐにすっ飛んでいくアクティブな女の子。学園でちょっと不思議な事件が起こると、自分からすぐに関わっていっては、小和田くんに事件解決の協力を求めてくるのでした。
小和田くんは、飯田さんが唯一の友達といっていいくらいに地味で物静かな男の子。基本周囲と関わりたがらないのだけれど、飯田さんだけには頭が上がらなくって、彼女に頼まれると嫌と言えないという弱みを抱えています。
別に付き合っているわけではないのだけれどいつも一緒にいる、友達以上カップル未満、という感じのふたりの関係がとてもいいですね。
小和田くんはたぶん飯田さんのことが好きなんだろうなと思うんですが、飯田さんの方はそういったことにはまるで無頓着で、何も気にせず小和田くんにベタベタしていく。なんなら水着姿だって平然と披露しちゃう。小和田くんはそんな飯田さんにため息をつく。男子の一方通行な想いに気付かない女子、という姿に思わずニヤニヤしちゃいます。


今回描かれたのは、家からいなくなった飼い猫、調理室から突然消えたケーキと指輪、差出人不明の花束とラブレター、傷付けられた美術部員の絵、の4つの事件。
どの事件も、ヒントはわりと分かりやすく出ていて、犯人が誰かというよりも、どうしてそういう事件が起こるに至ったのかという部分が丁寧に描かれていたように思います。
個人的なお気に入りは、4話目の美術部のお話ですね。高校1年生にして未来を嘱望される画家の卵・礼堂さんの完成間近の絵が何者かに傷付けられた……という、他と比べてだいぶ事件性の高いエピソードになっています。
事件を追う中で見えてくる礼堂さんの不安定さや、複雑な家庭環境……。若き芸術家ならではの生みの悩みとか、亡くなった父親を巡る母親との確執とか、少しほろ苦くもあり、それでいて温かみのあるいいお話だったと思います。
一迅社文庫では単巻作品ばかり手がけていらっしゃるようですが、この作品はぜひ続いてほしい! 小和田くんと飯田さんのお話がもっと読みたいです! 続いてくれるといいなあ。


イラストは水月悠さん。飯田さんの競泳水着が眩しいぜ。
斑鳩さんや礼堂さんも可愛くて目移りしますね。


演劇部の西さんを密かに推していきたい。