まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

伊達エルフ政宗

伊達エルフ政宗 (GA文庫)

伊達エルフ政宗 (GA文庫)

ストーリー
ある日戦国時代の真田幸村として転生した高校生・真田勇十は、なぜか伊達政宗のもとで目を覚ます。
しかもそれは、織田サタン信長が覇道を進む世界で奥州の制覇を狙うエルフの少女、伊達エルフ政宗だった。
戦国時代の歴史を知る勇十は、その知識を活かして政宗の家来として働くことになるのだが……。



伊達エルフ政宗! どうだこのタイトルの吸引力は!
ということで完全に一本釣りされたわけですが、いざ読んでみれば存外にしっかりと戦国ものをやっていて嬉しい計算外でした。
それでいて、アルラウネやドワーフサキュバスといった大名たちの種族ならではのファンタジー戦略なんかもあって面白かったです。


織田サタン信長によって壊滅した真田一族の末裔・幸村は、秘術・イヅナ法を使い、異世界から自らに似た魂の持ち主を召喚する……。
そして幸村の体の中に転生したのが現代日本の高校生・真田勇十。しかも目覚めたのは伊達政宗の館!
ところが伊達政宗は女で、しかも伊達エルフ政宗だというのだから、そりゃ混乱しますわ……。まあ美少女ならなんでもいっか!
なんでも、伊達エルフ政宗は絶賛奥州支配を画策中で、覇業を阻む佐竹アルラウネ義重と戦ったり、最上ダークエルフ義光の動向を伺ったり、北条サキュバス氏直と同盟を組んだりしているのだという……こんなん笑っちゃうだろ! 悔しいけど!


ということでいきなりツッコミどころ満載でしたが、いざお話が展開してみると、期待以上に戦国戦記ものをやってくれていました。
正直、このあたりの大名なんて伊達政宗しか知らないくらいだし、戦いも初めて聞くものばかりでしたが、どうやら結構歴史に忠実な部分もあるみたいで驚きました。だってエルフなのに! アルラウネなのに!
かと思いきや、奥州のエルフは保守的で変化を嫌うとか、アルラウネとサキュバスは他人の精を吸う者同士で仲が悪いとか、歴史上のあれこれを何かと種族の特徴のせいにしちゃっていたりして、また笑かしてくれるわけです。歴史とファンタジーのどちらも引き立てていくバランス感覚が実に優れているなと感じました。
圧倒的に優れた才を持ちながら家臣団の多くから遠巻きにされている政宗。彼女が心から頼れるのは伊達成実(エルフ)と片倉小十郎景綱(エルフ)だけ……。
そんな行き詰まった感のある伊達家に突如迷い込んだ真田幸村こと勇十が、成実、景綱と協力しながら、強いのにどこか脆い政宗を支えていく……そんな家臣の絆が熱く描かれていて良かったです。
1巻でかなりいいところまで進みましたが、この世界では本能寺の変が起きていないというのが最大のポイント。強大すぎる織田サタン信長を相手どり、天下を狙うことができるのか……。上杉マンティコアや武田ヴァンパイアの出番にも期待です。


イラストは光姫満太郎さん。眼帯を付けて刀を持っていればエルフでも伊達政宗だと思えるから凄いですよね、実際。
一番のお気に異例は北条サキュバス氏直ちゃん!


まさか独眼竜にそんな意味が。