まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

マッドネス グラート王国戦記

マッドネス グラート王国戦記 (Novel 0)

マッドネス グラート王国戦記 (Novel 0)

ストーリー
かつて『姫獅子』レオンハルト王子から命を救われた元羊飼いの若者レグルス。
それから十年後、王都で起こった内乱から王太孫を守って落ち延びたレオンハルトの下に意気揚々と馳せ参じる。
レグルスは、天(才能)と地(身分・生まれ)には愛されないものの、人に愛されるという将の資質に恵まれていて……。



政変が巻き起こった王国で、姫獅子と呼ばれた王子とかつて彼に命を救われた少年が、義のために兵を挙げるファンタジー戦記。
うおおおお、これは面白かった! 平民の生まれで、才能に溢れたわけでもない少年が、ただ人を信じ人に愛されて、次々と手柄をあげて成り上がっていく!
時に狂気とまで称される、彼の他人への信頼ぶり、主への忠義と仲間たちへの熱い思いに胸が震えました。


王太子を暗殺し、病床の国王を傀儡としてグラート王国王都に覇を唱えた第三王子ローデンドルフ。
まだ赤子の王太子の息子をなんとか救い出したのは、「姫獅子」の二つ名を持つ王弟の息子・レオンハルト
差し向けられる第三王子一派の兵。頼りの貴族・ヴォルフ領まではあと少し……寡兵でどうにか敵兵を突破したと思われたところに迫る伏兵! そこでレオンハルト軍を救ったのは、10年前に彼によって命を助けられた18歳の若者にして今作の主人公・レグルスでした。
10年越しの再会を果たした主従は、王国を正しき者の手に戻すべくヴォルフ領にて兵を挙げるのです……!


天にも地にも人にも愛されることが覇者の条件と言われるこの王国。レグルスは天(持って生まれた才能)にも地(身分や生まれ)にも特には恵まれていませんが、人に愛されることに関しては随一の才を持っている男です。
特筆すべきはその人柄。自分の直感にかけて、信じると決めた人に対してはとことん信じぬく誠実さ。自分のことよりも他人のことを優先できる優しさ。何よりも、主君のためにどこまでも一生懸命なまっすぐさ。
ひとたび彼と関われば、彼のことを気に入らずにはいられない、そんな人たらしっぷり。彼自身は猛将でも智将でもないけれど、そんな彼に惹かれて武に優れた元山賊の頭領や知恵者の商家の娘といった才能が集まってくる。
レグルスは彼らのことを信じ、彼らはその信頼に応える。そうしたことを繰り返して、山賊の討伐や陣城の建築、本拠地防衛など大きな手柄を立て続けにあげていく姿に胸が踊りました。
かなり読み応えのある1冊でしたが、レオンハルトの覇業はまだ始まったばかりで、陣営は弱小といっても差し支えない現状。強大な第三王子はもちろん、他の陣営もまだ生き残っており、さらなる争乱が待ち受けていることは間違いありません。
戦いに次ぐ戦いの中、次はレグルスたちがどんな活躍を見せてくれるのか楽しみでなりません。今後に大期待のシリーズですね!


双剣士はロマン。