まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

魔王サスペンス劇場 土けむりダンジョン、美人勇者殺し

ストーリー
ついに魔王の間へたどり着いた5人の勇者たち。
最終対決が始まる……かと思いきや、戦いの前に勇者がひとり殺されてしまう。
残った4人の残念勇者たちを容疑者として、魔王による勇者殺人事件の謎解きが開幕する……。



魔王の部屋で戦いが始まる前に殺されてしまった最強の勇者! 誰が彼女を殺したのは……魔王そっちのけで犯人探しが始まる!
面白かった! 4人の勇者がそれぞれ残念すぎて、魔王がひたすらツッコミに回らざるをえないという可笑しみ。
とにかくギャグのテンポが良いし、ミステリー要素も意外に豊富で読んでいてとても楽しい1冊でした。


主人公・ルートは、わりと強大な力を持っているわりになぜか勇者たちから忘れ去られてしまった悲しきぼっち魔王。
そんな彼のもとに久しぶりに勇者たちがやってきた! かと思いきや、戦いの前に部屋が真っ暗闇になり、明るくなったら1人殺されちゃっていた!
魔王のことをほっぽり出して罪のなすりつけ合いを始める残念勇者たちと、早く犯人を見つけて勇者との戦いに入りたい魔王との、奇妙な共同推理会議が始まるのでした……。
お話の構成は、各章ごとに勇者ひとりを容疑者とし、その人物と殺された勇者・レクシアとの過去の関わりを探り、殺害動機の有無を調べていくというもの。
ひとりずつ勇者たちが過去を語ってくれるのですが、いかんせん全員アレな勇者なもので、見栄を張って嘘をついたり不都合な真実を隠したり……。勇者が語ったことと真実とどこに食い違いがあるのか、各章単位でもひとつのミステリー風短編になっていたので、ずっと飽きずに読ませてくれましたね。


容疑者たる勇者たちは、魔王ルートを生涯の敵と定めた猪突猛進勇者・ミア、酒と金とギャンブルに目がない格闘家勇者・サキラ、勇者協会を脅かす秘密結社の存在を声高に主張する唯一の男勇者・グアン、炎魔法を操る高飛車お嬢様勇者・ローラの4人。共通点はみんな自分大好きな短絡思考……つまりおバカさんということ!
とにかくこの4人がボケにボケまくってくれるので、悪の枢軸たる魔王(ツッコミ役)がすごい真人間に見える! というかこの魔王ルートさんも、魔王なのにやたら勇者に甘い上にわりと善人気質で、勇者たちよりよっぽどいい人っぽい! なんていうかな、肩書きで人を見るって良くないんだなってしみじみと思いました……(笑)。
ひとつ過去の謎が解かれるごとに明らかになる勇者レクシアの圧倒的な強さと、その異常性。そこから浮かび上がってきた意外な事実。
最後までトンチンカンな推理劇ではありましたが、それも込みで、色んな楽しみ方のできる1冊でした。この分だと続きはなさそう……と思いきや、あとがきに「次巻でもお会いしましょう」とあったので、期待して待っちゃうぞ! 待っちゃっていいんだよね?


イラストは魔太郎さん。この表紙を見よ。デカい。圧倒的デカさだ。
キャラデザではローラが一番好きです!


このドリルの名にかけて!(これは流行る)