まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

エンデンブルクの花嫁

エンデンブルクの花嫁 (ファミ通文庫)

エンデンブルクの花嫁 (ファミ通文庫)

ストーリー
強大な帝国、人魚の海の国、エルフの森の国の三国に囲まれた小国・エンデンブルク。
その若き国王スレンは、国の逼迫した財政を立て直すための政略結婚を画策する。
かくして人魚のヴィア姫とエルフのエユラン姫を娶ったスレンだったが、種族間の確執により両者の仲は最悪で……。



第17回えんため大賞<優秀賞>受賞作品。
小国の国王が、持参金目的で人魚の姫とエルフの姫と同時に結婚しちゃうところから始まる三角関係花嫁ファンタジー。
面白かったです! 結婚のきっかけがきっかけだけに、最初はギスギスしているけれど、主人公の人柄に触れるうちにいつの間にか本当の恋に目覚めていってしまうふたりの姫が実に可愛らしくてニヤニヤしました。
互いに敵対していた人魚とエルフが、主人公に協力して国を救う展開も燃えましたね。


隣接する帝国からやってくる横暴な外交官への賄賂のせいで、財政が逼迫してしまっている小国エンデンブルク。
それを解消するために国王スレンが政略結婚! ……はまあいいのだけれど、人魚の国とエルフの国、両方から同時に花嫁を迎えてしまうんだから、ずいぶんいい面の皮だというかなんというか。
当然ながらふたりの姫はスレンに対して無関心。それどころか人魚とエルフの種族仲は最悪。最初からなんて冷えきった家庭なの……。
しかし、結婚から始まる恋物語というものはいいものです。初めどれだけ仲が悪くても、最後にはきっと円満に終わってくれるという一種の安心感がありますからね。
もちろん例にもれず、このお姫様たちも、次第にスレンに惹かれていくようになるわけですが……どちらかというと元気な体育会系の人魚の姫・ヴィアと、森の貴族といった佇まいのエルフの姫・エユラン。
対照的なふたりではありますけど、恋愛について初心で不器用なのはどちらも同じでしたね。それぞれちょっとした出来事でスレンのことが気になってしまってからは、ふたりとももう一直線という感じで微笑ましかったです。
さらに良かったのが、ヴィアとエユランのライバル関係ですね。いざお互いのスレンへの想いを察してからは、妙な共闘っぷりというか、協力を見せてくれました。一から十まで素直ってわけでもないんですが、恋敵だからって表でバチバチやらかすわけではなく、相手のことも認め合っているあたりが素敵です。まあ、男にとっての都合のいい環境って言われたらそれでおしまいなんですけど……。


ヴィアとエユランはスレンに恋をした。ではスレンの方は……? ということで、スレンもふたりを大事に思っているんだよという、その事実が思わぬ事態を招くことになりました。
国境に迫る帝国の大軍。迎え撃つ少勢のエンデンブルク軍。しかしこちらには、頼りになるふたりの姫がおりました。
人間の大軍に対して、人魚とエルフの力を借りて小国が立ち向かう! まさか戦があるような作品とは予想していませんでしたが、こうなってみると熱い展開ではありませんか。
いざ戦の場面では、スレンよりもむしろ、ヴィアとエユランが格好良かったですね。戦うヒロイン大好きです。
エンデンブルクにまつわる困難のあれこれが一気に解決された形となりましたけど、ふたりの花嫁との結婚生活はまだまだこれから。今後この3人がどんな家庭を営んでいくのか、楽しみで仕方ありません。


イラストはやすもさん。口絵がどれも味わい深くて好きですね。
キャラデザが一番好きなのはなんといってもフェンさん!


実際、フェンが一番可愛いと思ってしまうのは私だけではないはずだ……メイドは強し。