まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

雨の日も神様と相撲を

ストーリー
子供の頃から相撲漬けの生活を送ってきた中学三年生の文季は、両親が亡くなったことでド田舎へ引っ越すことに。
そこでは何と、相撲好きのカエルの神様が村人たちから崇められていた。
村を治める一族の娘・真夏から声をかけられた文季は、彼女の家で喋るカエルの姿を目にする……。



小柄な体格ながら相撲に造詣の深い少年が、カエルと相撲が崇められるおかしな村でカエルの神様たちに相撲を教えていく少し不思議な青春相撲ストーリー。
いやあ、いいもん読みました。出だしは独特な村社会の不気味さなんかを描きつつも、いざ相撲の場面では知らず胸が熱くなるし、ラストは驚くほど爽快なのです。
ラスト十数ページでヒロインを最高に可愛く仕立てあげるのはずるすぎる!


主人公の文季は、相撲好きの両親に促されて小さい頃から相撲道場に通ってきた小柄な中学三年生。
田んぼに囲まれたド田舎の久々留木村へと引っ越してきた文季でしたが、そこは相撲とカエルが村人たちからやたら崇められているおかしな村!
村の少年たちと相撲をとる中でその知識を見込まれた文季は、実在したカエルの神様たちから相撲を教えるよう頼まれる……という、やたら相撲押しのお話でした。
そもそも最初から相撲の雑学語りが凄くって、日本神話における相撲の話や、実際の立ち会いの描写、体の小さい人の工夫などなど、予想していた以上に相撲がメインでしたね。
私自身は欠片も相撲に興味がなかったのですが、しかしこの相撲語りが不思議と面白いのです。小柄な文季が体格のいい少年たちに侮られながらも善戦して認められていく展開には燃えますし、カエルの相撲に至っては、カエルの体格を活かした独自の決まり手を考えるなんて飛び道具まで飛び出して、思わずぐぐっと引きこまれました。
何事も、詳しく語られればそれなりに興味が湧くものですが、これだけ相撲というネタに魅力を感じさせるのは、純粋に作者の腕力によるものではないかと思います。


いきなり村にやってきたという外来種のカエルを相撲で倒すため、はりきるカエルの神様たち。
そんな彼らに相撲を教えつつ、代々神様と意思疎通を取ってきたという一族の娘・真夏とも、少しずつ友好を深めていく文季。
一方、刑事である文季の叔父が調査している隣の市で起こったという殺人事件について、カエルたちから思わぬヒントが得られたりもして、変なところで色んなストーリーが絡まりあっていく面白みを味わえました。
カエルたちの決戦、殺人事件の顛末、そして明かされるカエルの神様の真実と、一族の娘の悲しい運命、そしてそれに対して文季が取った行動。
文季も真夏もそれまで全くそのような姿を見せなかったために完全に油断していたけれど、こうなると全然話が違ってくるよ!
終盤でいきなり真夏の魅力が跳ねあがるもんだから、また最初から読み返したくなるじゃないですか。こんなのずるいでしょ……。
ほんと、何度でも読み返したくなるような素敵な後味の青春物語でした。拍手。


カエルの相撲はぜひビジュアルで見てみたいので漫画化しよう。そうしよう。