まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

コロシアムIII

ストーリー
二年一組最後の生存者・沖羽留奈を確保し、ゲームに一時均衡をもたらすことに成功した萩原悠人。
だが追い詰められた生徒たちの暴走は止まらず、更なる悲劇を生んでしまう。
一方、一年七組と一緒に立てこもる月島伊央は、萩原との再会を信じ一人戦い続けて心も身体もボロボロになってしまっていた……。



全校生徒で命を奪いあう大規模デスゲーム「コロシアム」の顛末を描いた学園バトルサスペンス、最終巻。
ここまで散々やっておいて、最後の結末はこうなるのですか……。助かってほしかった人にも、逆に憎らしかった人にも、そんな思いとは全く関係なく、終わりが訪れる。
それはある意味無慈悲で、むなしい気持ちになるし、正直拍子抜けでもあるけれど、これ以上なく正しいことではあるんですよね。ただ、遅かっただけでね。


寄宿舎のセレクション派と校舎のラストワン派、双方から常に狙われながら校庭中央での生活を続ける萩原たち。
キーパーソンは羽留奈。武力は環奈で、中心人物は金剛さん。オマケの北野と鳴美。
人数は少ないけれど、学校で唯一の羽留奈の存在と金剛さんがいれば、きっとなんとかなる……そう思っていたのですが、やはり淡い期待に過ぎませんでした。
渚が率いるセレクション、琴音や汐見のラストワン、咲季たち部室棟の勢力、そして流華が統括するショッピングモールの非武装勢力
それぞれの勢力が、それぞれの思惑で生き残るために動く。もはや対話は意味を成さない、綺麗事は言ったほうが負け、そんな風潮の蔓延に息が苦しくなってきます。
構造のゲスさが際立っていたのは、なんといってもショッピングモール。自らは戦わずして武力だけを売りさばき、裏でゲーム全体を操ろうとする。一番頭のいい方法ではありますが、やっぱり釈然としない部分があるのも確かです。星の数に左右される構成員たちの実情もね、生々しくて嫌になっちゃいますね……。


バラバラになったメンバー。失われた命。そして遂に再会を果たす萩原と伊央。
伊央は、守るために他人を撃ち続けて、自分も傷ついて、それでクラスメイトからは怖がられて、大切な人とは別れることになって……もう見ていられないくらい。
そんな彼女に「戦え」と言う萩原は、非情ですが、まだ諦めていないということでもあります。
このゲームでは、諦めたらそこで終わり。あまりに戦いすぎて、もはや引き返せなくなっても、まだ理想を追いかけることができれば、もしかしたら道が開けるかもしれない。その点において、萩原はやはり主人公でした。あまり好きにはなれませんけど。
ふたりの戦いがどういう結末を迎えたのかは書かずにおきますが、ほんと、最後の最後まで性格の悪いゲームでした。ため息しか出てきません。
ちなみに、最終的に一番好きになったキャラクターは金剛さんでした。最終巻にして抜群のヒロイン力を見せてくれていたと思います。君がMVPだ。


口絵の環奈に癒やされる。