まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

謎好き乙女と偽りの恋心

謎好き乙女と偽りの恋心 (新潮文庫nex)

謎好き乙女と偽りの恋心 (新潮文庫nex)

ストーリー
早伊原樹里の姉・葉月が生徒会長を辞任すると宣言。
急すぎる辞任宣言に違和感を覚えた春一は、真相を調べ出すともともに、会長との日々を回想する。
樹里に振り回された夏休みの出来事や、春一が生徒会に入る契機となった銅像消失事件のことを……。



夏休みに起きたいくつかの不思議事件を回想しながら、生徒会長の突然の辞任宣言の理由を探っていく巻。
今回のテーマはズバリ「恋」なんですけど、みんな変な方向に不器用で、見ていてもどかしい……。
分かってはいましたが、結局ココに戻ってくる展開には、ほっと安心しました。


春一が回想するのは、夏祭りのくじ屋の謎、生徒会合宿での幽霊の謎、相談ポストに投函された恋愛相談の謎、そして学校の銅像が一夜で消えた謎。
相変わらず色んな謎に出くわす体質の春一。そして隣にはいつも早伊原。
別に早伊原のことを好いてるわけじゃないと言いつつ、結局夏祭りにも浴衣で駆りだされるし、合宿でも部屋に呼びだされちゃうし、なんだかんだで一緒にいるこのコンビの関係がほんと好きです。
ウイットに富んだ憎まれ口を叩きあって「挨拶」と言っちゃうのとか、きゅんきゅんしますわ。ずっとこのままなし崩しでつきあい続けて、そのままくっついてほしい!
ということで相変わらず早伊原推しの私としては、各エピソードの中では合宿の話が一番楽しかったですね。肝試しでびくびくして、珍しく春一の下手に(一度は)立っちゃう彼女が実に可愛らしいのです!


それぞれの過去のエピソードの中で、少しずつ見えてきた会長への違和感。そして、表立ってはいなかったものの実は着実に進んでいた生徒会内部での亀裂。
もうね、めぐみも鮎川も、そして会長も、ほんと不器用! 生き方が不器用すぎて、やってることはむしろ器用なんだから、ため息が出ちゃいます。
この不器用さを抱えながらも懸命に日々を生きるっていうのが青春ってことなのかな……。みんながみんな、我利坂みたいに分かりやすかったら、逆にこじれたりはしないのかもしれませんけど。もちろん、みんな我利坂みたいだったらそれはそれで嫌ですけど(笑)。
春一が隠す過去の秘密も、またひとつ明かされましたね。学校ではままあることかもしれませんが、苦い。苦いなあ。
そんな苦いものを抱えながらも、彼がいようと思える場所。偽りなく接したいと思える相手。エピローグでは思わずニヤニヤしてしまいましたが……ラストでまたまた、爆弾を落としていってくれましたね。
今度はどの人物のどんな真実が明かされるのか。誰よりもミステリアスな早伊原の秘密は……? 色々と期待しつつ、次巻を待ちたいと思います。


祭りを素直に楽しめないオトナになってしまったな……。