まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

されど僕らの幕は上がる。Scene.2

ストーリー
リアリティー番組『シェアハウス』に隠された過去の事件。
杏の描いた絵を手がかりに調査へ乗り出す涼太だが、自身の記憶はあやふやで、周りの大人からも大した情報は得られない。
それでも諦めない涼太に、キャストたちはようやく本音を明かしはじめるが……。



2巻にして完結。人気番組の裏に隠された、キャスト陣と過去の事件のつながりを紐解いていく解決編。
どのメンバーもみんな不器用すぎて、他人をはねつけてばかりで、思春期ってほんとめんどくさい!
でもそれを乗り越えて、ただの番組上のつながりだけではない、確かな友情を確認していく……青春。なんだかんだで清々しいラストだったと思います。


杏が描いた花火の絵をきっかけに、7年前の新幹線爆破事件に自分たちが関わっていたのではないかと気づきはじめる一同。
何かを思い出したメンバーと、そうでないメンバー。どちらも全然周りと言葉をかわすっていうことをしようとしないで、自分ひとりで溜め込んで当たり散らすもんだから、ギスギスが止まらないよ! 誰か助けて!
特にひなたは、琴の件で少しだけ涼太と近づいたかな、というところでこれだから、呆れてしまいます。なんて面倒な女なの……。
唯一確かな記憶を持っているらしい綾乃もやたら刺々しいし。まあ、全て終わった後で考えてみれば、彼女の場合はこの態度も仕方なかったかな、とは思うんですけど。


そんな中で、ひとり頑張る涼太に協力してくれるメンバーが遂に現れました。
優奈はわりと最初から涼太と一緒にいてくれたし、順当だなと思ったんですが、予想外だったのが拓海ですよ。まさかお前が力になってくれるとはね。
相変わらず口は悪いけれど、涼太や優奈と共に過去の事件を調べる姿や、涼太にだけ思いを明かしてくれる姿は、意外なくらい友達っぽくてほっこりしました。
一番印象的だったのは、やっぱり綾乃でしょうか。初めからずっと隠してきた気持ちを全部ぶちまけた綾乃はとても痛々しくて、孤独で、切なくて、天才少女棋士なんてもてはやされていても、中身はひとりの女の子なんだなと改めて感じます。
みんな、素直になるまでずいぶん時間がかかったけれども、かつて共有した過去を全て思い出した7人がここからまた始めてゆく、そんな気持ちのいいエンディングを迎えてくれてよかったです。
ひなたも、龍之介も、杏も。この7人が、これからもずっと続いてくれるといいな。


涼太のメディア嫌いっぷりが凄く気になったんだけど、ちょっとネットに毒されすぎなのでは……。