まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

サムライ・オーヴァドライブ ―桜花の殺陣―

ストーリー
刀剣ヲタクが高じ、刀剣管理機構『SEAS』に籍を置いた少年・方助は、かつて自分の命を救った一振りの“業物”の使い手と邂逅する。
しかしその人物は年端もいかない少女であり、さらに初対面の方助が本気で心配するほど世間知らずで気弱であった。
そんな少女・鳴とその刀を狙い、西洋の魔剣使いがふたりの前に姿を現すのだが……。



最強の血筋と刀を受け継ぐ天才少女剣士と、刀に魅入られながらも剣腕に恵まれなかった少年が、西洋から来た伝説の魔剣使いに挑む!
剣への信念や思いを持たなかった少女が少年と出会って変わってゆく姿とか、力がないなかでの少年の足掻きとか、剣の世界に渦巻く血筋の呪いとか、色々と見どころはあるけれど……とりあえず、そんなものは全部放っておいてよいのだ!
刀だ、美少女だ、チャンバラだ! 銘刀と魔剣が、抜刀術と伝説が、ぶつかり合うのだ! つまり浪漫なのだ! ……分かるでしょ?


持ち主の「血」を刃に焼き込む特殊技術「緋鋼」によって、銃器ではなく、刀剣と刀剣使いこそが最強とされる世界。
ヒロインの鳴は、そんな刀のひとつを代々受け継いできた選ばれし血筋「鋼の血統」の末裔です。
季風家二十一代目たる彼女が振るう刀は善鬼国綱、その技は季風流・封刀抜刀術……。うおおおお、もうこの時点でもうたまらないのじゃ! 剣戟浪漫なのじゃ! 中二心がくすぐられまくりなのじゃ!
一見頼りなくって、気弱で、風船を取ろうとして木から落ちちゃうような女の子が、いざ刀を手にすると文字通り最強最速の剣士になるっていうのがまた最高じゃないですか。こういうの! こういうのに弱いんですよ!
かと思えば、刀の使えない主人公・方助は炭素繊維の糸「黒縄」を操る糸使いだったりするし、「絶刀術」なる無手の対刃戦闘術の使い手だったりもして、こっちもこっちで熱い!
ストーリーをとやかく言う前に、こんな設定をぶち込まれた時点で、もうこっちはノックアウトなわけですよ……。


とはいえ、当然ながら、ストーリーの方も熱さいっぱいの内容でした。
当たり前のように剣と共に過ごしてきたが故に、剣に対する特別な思いを抱かずに来た鳴。そんな彼女とは対照的に、剣の血筋に対して強すぎる憎悪を抱く西洋からの刺客。
そんな両者がぶつかり合う一方、刀に純粋な思いを向ける少年と出会い、その言葉によって移り変わってゆく少女の心……刀に信念が宿るとき、少女は更に強くなる!
何かと横暴な「上」の人たちへの反発があったり、表立った戦いの裏に隠れた陰謀があったり、仲間を傷付けられて……な展開があったり、実にストレートな展開が続きますが、だからこそね、燃えちゃいますよね。やっぱりね。ラストシーンがまた良かったです。いやいや、綺麗に締めてくれるもんだ。
一緒に歩みだした鳴と方助の戦いはまだまだこれから。次はどんなチャンバラを見せてくれるのやら、楽しみでなりません。


イラストは枕狐さん。表紙が超絶美麗ですね! これは目を惹かれちゃうわ!
あとハインツさんがやたらイケメン。


本当の追撃部隊、ここでこのふたりに活躍させるのはずるいわあ!