まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

白蝶記 ―どうやって獄を破り、どうすれば君が笑うのか―

ストーリー
雪深い山に囲まれた児童養護施設で育った旭と樹。
ある教団が運営する監獄のような施設でつらい日々を過ごしながらも、親友・陽咲の明るさに救われて静かに暮らしていた。
しかし施設には、何かにつけて旭と樹を痛めつけようとする指導職員・小倉がいて……。



教団によって管理された閉鎖的な児童養護施設で、職員から虐げられる3人の少年少女の物語。
面白かったです。主人公のふつふつとした怒りが爆発してから、次第に追いつめられていく緊張感が良かったですね。
何もかもが終わったか……と思ってからの、ラストシーンもなかなか爽快でした。


ある「教団」が管理する、山奥の児童養護施設。施設のある村にも教団の人々が住んでおり、出入りが厳重に取り締まられている治外法権の場所。
そんな外界から隔離された施設で、ずっと一緒に過ごしてきた3人の親友、旭、樹、陽咲が、お話の主人公です。
この施設というのが、もう明らかに胡散臭い。怪しげな教団が管理母体っていうのも、自由な出入り禁止っていうのもそうだし、暮らす子供たちの生活もとてもまともには見えず、旭たちを除けば暗い表情の濃ばかり。
その上、旭と樹の指導職員・小倉は、教団で禁じられている酒をかっくらっては、ムカつくから、歯向かったから、くらいの理由で旭を「懲罰房」に閉じ込め、ろくな食事も与えずに何日も放置するような男。そんな職員が大手を振って在籍している時点で、色々と察してしまうというものです……。


そんな状況でも、病弱だけれど優しい親友・樹と、いつも明るい女の子・陽咲に救われて、なんとかやっていた旭。
しかし樹が懲罰房に入れられたことがきっかけとなって、小倉への怒りと憎しみがどんどんと膨れ上がっていきます。
現状を打開するために、年端もいかぬ少年が、このような計画を立てて実行に移すエネルギー。彼がどれだけのものを抱えていたのか、想像するだに恐ろしいですね……。
計画を遂行したことで、成ったものと、失ったものと。次に彼の身がどうなるか分からない緊張感の中で、いくつかの事実が明らかになっていき、また新しいものが見えてくる構成が見事でした。
特にやっぱり、最終章は盛り上がりましたね。このまま独特の後味を残して終わってもよさそうですが、ラスト2ページで新展開があったので、たぶん続いてくれるのでしょう。次巻が楽しみです。


イラストは白身魚さん。可愛い絵柄なのに、こういう暗めのお話にぴったりマッチするから不思議ですよね。
各章扉の見開き絵がとても印象的です。


口絵を見逃していたけれど、時任さんが意外と可愛かった。