まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

天牢都市<セフィロト>

ストーリー
十の浮遊する都市セフィラの下層・イェソドで用心棒として働く少年・カイル。
そんな彼の前に、空から一人の少女・ヴィータが落ちてくる。
世界の本質に干渉する力“定戯式”を用いて少女を救ったカイルだったが……。



第11回MF文庫文庫新人賞<佳作>受賞作品。
天空に浮かぶ10の浮遊都市群を舞台に描かれる、文字通り空から落ちてきた女の子とのボーイミーツガール。
ロマン溢れる天空都市の設定や、主人公と幼馴染みの女の子の丁寧なキャラクター造形など、佳作とは思えない完成度の高さに驚かされました。
都市の階層を超えられない閉塞感に囚われた主人公が、少女との出会いをきっかけに前を向いていく展開に燃えます。


空に浮かぶ10の都市・イェソド。最上層、上層、下層、最下層に分かれ、上層から下層へ行くことはできても、その逆はできない……下層に生まれついた者は、一生を下層で過ごすしかない、そんな閉鎖された都市群。
主人公のカイルは、かつて親友の女の子と共に空を目指し、そして落ちた少年。
挫折以降、下層で細々と生きることしかできなくなってしまった彼の前に、ある日空から女の子が! ここまで文字通りな「空から女の子が」は久しぶりに見たので、思わずテンションが上がってしまいました(笑)。
少女ヴィータは、無邪気で愛らしく、気になるものを見かけたらどこまでも行ってしまいそうな女の子です。
謎の組織から狙われている彼女を守りながら、なし崩しで一緒にいるうちに、固くなった心を少しずつ解きほぐされていくカイルの姿が印象的ですね。


ストーリー上で重要な役目を果たしてくれたもうひとりのヒロインが、カイルとともに空を飛び、落ちた少女・リアです。
事故の影響で杖なしでは歩けなくなったリアに対して罪悪感があり、まともに彼女に向き合うことができずにいるカイル。そんな彼がしっかり自分の目を見てくれることを待ち続けるリアは、気丈で、厳しく、そして健気な、とても魅力的なキャラクターでした。
ヴィータが追手に捕まってしまい、ようやくカイルに勇気が芽生えたとき、最後のひと押しをしてやったのは彼女でした。ヘタレを叱咤する姉御肌の幼馴染み、いいコンビじゃないか。
ずっとヴィータが隠していた秘密、彼女を狙う人物の思惑、そしてカイル自身の謎。色んなものを抱えつつのラストバトルは、迫力があって見応えがありましたね。
爽快なエンディングでしたが、まだ明かされていない部分もありますし、続きの展開が気になります。次巻が楽しみ。


イラストはぴょん吉さん。細やかなイラストが背景デザインと合わさって、実に美麗な表紙になっています。
店員服を着たヴィータが可愛い! でも予想以上に肌出しすぎ!


ミリーとフィーの出番を期待。