まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

不器用な天使の取扱説明書

不器用な天使の取扱説明書 (HJ文庫)

不器用な天使の取扱説明書 (HJ文庫)

ストーリー
高校入学を直前に創作活動を諦め、楽しい一般人ライフを目指す峰本信哉。
しかし教室の隅でひたすら漫画を描いていたクラスメイト・目崎凛が起こした騒動をきっかけに、凛に目をつけられてしまう。
流されるまま、凛の漫画を手伝うことになる信哉だったが……。



第9回HJ文庫大賞<大賞>受賞作品。周囲から理解されにくい絵の才能を持った少女に、創作を捨てた少年が出会う青春×学園×創作ストーリー。
とても良かったです! グロ系の漫画に対するヒロインの熱意が、ひたむきさが、かつて全てを諦めた少年を変えていく……。
はた迷惑だけれどなぜか放っておけない寂しがり屋なヒロインが、どこまでも愛しいですね。


自身の才能のなさに打ちのめされ、中学時代にのめり込んでいた小説執筆とオタク活動をすっぱり捨てて高校に入学した主人公・信哉。
一般人の友だちもできて、上々のリア充ライフをスタートさせた信哉だけれど、ある日ひとりで席に座って絵を描いている暗くてぼっちな少女・凛と出会ってしまいます。
女の子が臓物をはみ出させているグロ絵。でも間違いなく才能を感じさせるその上手さ。
自分にはなかった才能のきらめきに、苦しみつつも魅せられてしまう。漫画を一緒に作ろうと言われて、逃げようと思いながらも、逃げきれずにアドバイスをしてしまう。それはひとえに、凛が誰にも認められない絵を、ひたすらに描き続けてきたその情熱があったから。
一方の凛からしても、この出会いは画期的でした。今までみんなから気持ち悪がられてきた絵を、まっすぐに褒めてくれる人が現れたのですから。
もっと孤高を愛するタイプかと思っていたら、一気に懐いてくるパターンのヒロインでドキドキしました。頑張る女の子ってそれだけで魅力的なのに、ずるい。可愛いです。


そんな信哉と凛のミニ創作クラブ(?)に、クラスのマドンナ・千佳が絵本作家を目指していることをカミングアウトして参加。
クラスでの地位は天と地の千佳と凛ですが、創作をする者同士、仲良くなるのは意外なほど早かったですね。
ふたりが一緒に同人誌を作り、順調に成功を重ねていく一方、ひとり置いていかれる信哉。
悔しいと思いながら、自分の才能を振り返って、やっぱり踏み出すことができない彼の姿は、もどかしいけれど気持ちが分かってしまって切ないです。
諦めたままに終わってしまうのか、と思いきや……男の子を動かすのは、やっぱり困っている女の子。凛のために過去を吹っ切って立ち上がるお前は、なかなか格好良かったぞ。
さて、ようやく全員がスタートラインに立ちました。ここから信哉と凛と千佳は、どのように創作を続けていくのか。恐らく先行きは険しいけれど、この覚悟があればきっと大丈夫かな。
もちろん、恋愛方面も気になるところ。凛も千佳も、ちょっと信哉への目が怪しくなってきたし、期待してしまいます。続きが楽しみ!


イラストは町村こもりさん。暗い凛と明るい千佳の対比がいいですね。
凛の絵にモザイクがかかっているのは残念!


水野&松尾コンビ、結局ほとんど出番なかったけど、何かしでかしそうで不安……。