まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

SとSの不埒な同盟2

ストーリー
ビーチバレー大会のあと、大輝は窓子先輩と、ルチアは代替教員の暮林とつきあい始めた。
ドMで理想的な恋人を手に入れたふたりだが、Sな妄想を実行に移せず、悩んでいた。
そんな状況を打開するため、ルチアは遊園地でのダブルデートを提案してくるが……。



Sな男子とSな女子が織りなす、不埒で危うい、でも純粋な青春恋愛ストーリー、2巻にして完結。
素晴らしかったです! それぞれ理想のMな恋人を捕まえた大輝とルチアだけれど、おつきあいの中で次第に生まれる、苦悩と葛藤。どちらもSとMの見事なカップルぶりだったし、窓子先輩も、そりゃもう可愛かったのだけれど、でも、やっぱり……。
SとSでも、恋人になれるの? ちょっとした奇跡が導いてくれた、ふたりの結論に乾杯。


大輝は窓子先輩と、そしてルチアは暮林と。Sなふたりは、狙い通りのMな恋人を無事に手に入れて、すっかりご満悦。
でも、もしも妄想のままのSないじめをそのまま行動にうつしてたら、当然恋人には引かれて、だめになってしまう……。
お互い、まだSな本性は隠したままにつきあっているから、欲望と自制との間で、がんじがらめです。Sもなかなか、大変ですね。
そこで、同志で協力しつつやってみようと、ダブルデートを仕組んだまではよかったのだけれど……。大輝とルチアだけで息が合ってしまって、窓子先輩と暮林は置いてきぼりに。
こんなことになるんじゃないかとは思っていましたが、大輝もルチアも、ちょっとハッスルしすぎです。ああ、Sとはかくも茨の道なのだなあ。


窓子先輩は、儚くて一途で、他人思いで、とっても素敵な女性でした。遊園地での大輝とルチアの姿を見て、自分よりもお似合いなんじゃないかと感じて、悲しむ姿に胸が痛みます。
結局のところ彼女は、美園と同じく大輝に振り回されただけで、それなのにお別れは自分の方から言い出してくれるような本当に優しい人で、もう本当に、うちの大輝がごめんとしか……。
その美園も、大輝に振られまくっているのに、心の底から大輝とルチアのことを思ってくれていて、もうほんと、めちゃくちゃいい女すぎて、見ていて辛いです。たまたま縁がなかっただけ、なんだけれど……切ない、切ないよう!
これだけ周囲からお膳立てをしてもらっても、やっぱりS同士という引け目があって、なかなかくっつくことのできないふたりが、もどかしくてたまりません。
特にルチアの方が頑なで、もうだめかも、なんて思ってしまったり。SとSでは、ドキドキしあうことはできないのでしょうか。恋人になることはできないのでしょうか。これだけ、お互いのことを理解していて、息もぴったりで、隣に相手がいないと、淋しくて仕方がないっていうのに……?
最後のひと押しは、やっぱりあの子でした。誰がなんと言おうと、君がこの物語のMVPです。ありがとう。
こうなるまでに色々あったけれども、期待通りの結末を迎えてくれて、本当によかった。みんなの後押しと、少しの奇跡で生まれた恋の芽に、これからいっぱいの幸せが訪れることを祈ります。


美園も雛崎も、大輝よりもうんといい男を捕まえて、もっともっと幸せになってやれ!