まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

ねじまき精霊戦記 天鏡のアルデラミンVIII

ストーリー
カトヴァーナ帝国を大きく揺るがしたクーデターから約二年。
第二十八代皇帝となったシャミーユは、反発の気運漂う国内を、強硬な手段をもって治めようとしていた。
一方、隣国のキオカ共和国でも内紛が連続しており、その鎮圧に当世の麒麟児ジャン少将が乗り出すのだが……。



面白い……。もう読むのをやめようかとさえ思ったのに、悔しいけれども面白かったです。
あのショッキングな前巻から、作中時間で2年が経過。帝国と「騎士団」は、すっかり様変わりしてしまいました。
皇帝シャミーユの圧政といい、隣国キオカでのジャンの活躍といい、正直帝国側に暗い未来しか見えないのですが、どうか「彼」の復活に期待したいところ。


今回の序盤は隣国キオカ側のお話。共和国体制の転覆を目論む過激な王政復古派と、「眠らずの輝将」ジャン率いる国軍との戦いが描かれました。
これまで「彼」の好敵手として登場してきたジャンですが、こうやってメインになってみると、実に主人公らしいキャラクターですね。
自分が信じる人のため、そして国の人々のため、困難な任務でも華麗に成功を収めてみせる。まさにヒーローの器です。ボスの政治家にいいように操られている不遇なところも、つい応援したくなります。
そんなジャンが、あの「科学者」アナライ・カーンと出会ってしまいました。「彼」を育てたアナライとの出会いが、ジャンにどんな変化をもたらすのか……先が恐ろしいですね。


クーデターの直後から皇帝となったシャミーユは、姫様と呼ばれていたあの頃とは、すっかり人が違ったよう。
自ら戦線に赴き、溢れる知略と倫理を度外視した戦い方で反乱軍を見事に潰してのけ、そして容赦なく断罪するその姿は、まさに悪の女帝。
誰から憎まれようが関係なく、滅びに向けて突き進むその孤高のダークヒーローっぷりがめちゃくちゃ格好良くて震えました。まっとうなヒロイン像からするとどうかとは思いますが、とにもかくにも強烈な魅力を放つキャラクターに成長してくれたものです。
一方で、彼女を守るはずの「騎士団」メンバーは、皆どうもぱっとせず。あんなことがあったのだから、当然ではあるのですが……。
あの頃とそれほど変わらないのはマシューくらいでしょうか。苦労人マシューさんは相変わらず大変そうだけれど、そんな彼の姿を見るとなぜか落ち着きます。
トルウェイは生来の生真面目さが災いしたのか、妙な方向に頑張ってしまっているし、そしてハロは……。
なんとも絶望を感じさせてくれる帝国の現状。やはり頼れるのは「彼」しかいません。その胸に開いた大きな穴を、何が埋めてくれるのかは分かりませんが、どうにかまた立ち上がり、重い今を吹き飛ばしてくれないものでしょうか。復活を待っています。


女帝シャミーユもアニメで見たいけど、さすがに厳しいか。