まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

復讐ゲーム ―リアル人間将棋―

ストーリー
将棋部に所属する南と後藤は、お互いの彼女を連れてダブルデートを重ねるなど、高校生活を謳歌していた。
しかし、文化祭の準備で学校に泊まりこみとなった夜、恐るべき復讐劇に巻き込まれる。
取られた駒は死ぬリアル人間将棋の対局者となった南と後藤は、駒となった恋人を守るため死力を尽くして対局に挑むのだが……。



取られた駒は死ぬ「リアル人間将棋」で、恋人の命を救うために対局者として親友と戦う将棋サスペンス。
いやー、悪趣味だ! まさかこんな形の将棋モノを読むことになるとは、思ってもみませんでした。
誰かを守るために誰かの死を選ぶのは、果たして許されることなのでしょうか……。


南と花楓。後藤と美咲。親友同士で付き合って、ダブルデートに行って、明るく楽しいリア充生活。
しかし、来る文化祭に向けての前日学校泊で、事件は起こります。次々に姿を消す大人たちと生徒たち。南と花楓も結局逃げられず、連れてこられたのは、人間が駒として設置された巨大な将棋盤。
イジメに遭い不登校になっていた少年・芳次が「協力者」の力を借りて実現した、衝撃の復讐場でした。
対局者は南と後藤。駒になっているのは花楓や美咲ほかクラスメイト、学校の教師たち。取られた時点で死ぬ彼らの命は、南と後藤がそっくり握っている形になります。
芳次から「五十手を超えてから千日手が成立すれば解放する」というルールが明かされ、誰ひとり死なせないままの千日手成立を目指す対局者ですが……。
丸く収まると思われた直前で、それは起こりました。またなんともゲスいやり方なんですけど、ともかくこれが、死のゲームが真の意味で始まった直接の原因です。もう最悪としか言いようがない。
ここまできたらもう止まれません。後藤は目的を達するために、そして南は、自分と花楓の命を守るために。皆の命を犠牲にしていくことになるのです……。


将棋は、駒を取ってなんぼのゲームです。当然、南の駒たちは次々に取られ、そしてこちらも取り返していきます。
普通の将棋なら当たり前のことですが、今回はそのたびに人が死にます。友人が、クラスメイトが、先生が、自分の決断で命を失っていく。まともな神経では、対局者なんてとても務まりそうにないですね……。
後藤は花楓が南の急所だと知っているので、執拗に彼女を狙ってきます。南は花楓の駒を捨てるような戦略が取れません。花楓は飛車ですから、攻めにも受けにも非常に重要な駒なのですが、彼女はあくまで安全でなければいけません。これは大きすぎるハンデです。
特定の駒を守るために戦略を考え、特定の駒を取るために指し手を変える。駒が人間だからこそ、普通の対局ではありえないような不思議な手筋が出てきて、悪趣味ながら面白みがありました。
対局の結末は、こうなりましたが、当然、達成感も爽快感もありません。後味もめちゃくちゃ悪い。もちろん、とてもハラハラさせられたし、お話としては面白かったのですが、ほんと、どうしてこうなってしまったんでしょうね……。げっそりしてしまった……。


とりあえず棋譜が見たい。