まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

彼女が捕手になった理由

彼女が捕手になった理由 (一迅社文庫)

彼女が捕手になった理由 (一迅社文庫)

ストーリー
左利きのショート・本摩敬一が所属する中学野球チーム『白倉柏シニア』。
ちぐはぐで万年二回戦どまりのチームだが、そこに突然名門チームの元キャッチャーの女子・梶原沙月が入部してくる。
監督権をまかせられた彼女は、容赦なくチームの改革をおこなっていくのだが……。



みんな才能がありつつもどこかちぐはぐだった中学野球チームを、キャッチャーとして入部したヒロインが見事な采配で変えていく青春野球ストーリー。
面白かった! 試合にガッツリページを割いて描く、どストレートな野球ラノベでした。
データも心理も読み合いつつ、最後にはチームの信頼で勝利をつかみとるのが実に熱血。爽快なスポ根ものです。


上手いけれど左利きのショート。リード下手だけれど強打者のキャッチャー。ノーコンだけれど豪速球のピッチャー。守備力抜群だけれど肩の弱いセンター。
みんなそれぞれ秀でた部分を持ちながらも、キャッチャーが仕事をしないために長所を活かしきれず、弱小と呼ばれるチーム。
そんな中に突如やってきた女の子が、新キャッチャーとして存分に有能ぶりを発揮し、チームの力を引き出していく展開にワクワクさせられました。
新顔で、しかも女の子だから、沙月があれこれ指示を出していくのに納得のいかないメンバーも当然います。主に元キャッチャーの阿瀬ですけど。
でも、共に試合を戦っていく中で、沙月の思惑や考え方、そして沙月が自分のことを認めていることを知り、次第に打ち解けあっていく。困難を乗り越えて結びつきが深まる、ザ・スポ根ともいえる展開に、胸が熱くなるのを覚えます。


順調に大会を勝ち進んでいく白倉柏が地区大会決勝でぶち当たったのは、かつて沙月が所属していた黒岡早良。
相手のキャッチャーが実にいやらしく、明確な敵役という感じで、絶対に勝ってほしい! という気にさせられます。
100ページ以上かけて一試合を描いたのには驚きましたが、7回の中にいくつも波乱があり、最初から最後までドキドキさせてくれました。
キャッチャーの力はもちろん大事。でもそれだけが野球じゃない。チームの絆とか、信頼とか、まあ綺麗事っちゃ綺麗事ですけど、やっぱりスポーツはそういうものが勝ってほしい。
野球におけるキャッチャーの大切さも描きつつ、スポ根ものらしさもきっちりと決めてくれる、清々しい1冊だったと思います。
それにしても、あれだけ格好良い姿を見せておいて、ラストに敬一と歩いているときにはこんなに可愛くなるんだから、沙月はずるいヒロインだ。


イラストはさくらねこさん。女の子のユニフォーム姿ってなんかグッとくるものがありますよね……。
司城のキャラデザがいかにもな感じで好きです。


誰か名前の元ネタ解説お願いします……阿瀬と新田くらいしか分からなかった。