まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

ユリシーズ ジャンヌ・ダルクと錬金の騎士I

ストーリー
十五世紀、フランス王国は王位継承権を巡り、イングランド王国と苛烈な戦いを繰り広げていた。
貴族の息子でありながら錬金術の研究に没頭する少年モンモランシは、パリの王立騎士学校で仲間たちと慌ただしくも充実した日々を送る。
だがアザンクールの戦いでの大敗に引き続いてパリが陥落、すべてを失い流れ錬金術師となった彼は、ある村で不思議な少女ジャンヌと出会う……。



百年戦争のヨーロッパを舞台に、ジャンヌ・ダルクをヒロインとして描く歴史ファンタジー。
うむむ、すごい文章圧! 歴史ものだけあって、人物や国家間の関係を頭に入れるだけでも一苦労の、壮大なストーリーでした。
人と人、国と国の微妙な思惑が渦巻く中で、彗星のように現れた少女・ジャンヌがどのようにしてフランスの英雄となってゆくのか、早くも今後が楽しみなシリーズです。


時は15世紀。フランスとイングランドの戦争が80年以上続き、精強なイングランド軍によってフランスは滅びへと向かいつつある……そんな時代。
この時代背景が、なかなかに難しい! フランスとイングランド、そしてブルターニュブルゴーニュ。4つの国の間では王家・公家の血縁が入り乱れていて、なんとも複雑な利害関係が生まれています。
主人公・モンモランシや、ブルターニュの姫騎士リッシュモンにフランスの姫君シャルロット、ブルゴーニュの公女フィリップといった主要人物たちの幼少期を描いた序盤で、主にその辺りのことが説明されているのですが、巻頭の人物相関図と地図があっても、理解するのはなかなかに大変でした。
分かりやすいように、かなり丁寧に説明してくれてはいるんですけどね。全体的にキャラクターの台詞が説明調すぎるように思えてしまうのも、まあ仕方ないかというところです。
私はこの辺りの歴史についてはまるで知識がなくて、誰の性別が史実から変わっているのかさえもよく分からないのですが、なかなかに面白いものですね。主に王家の恋愛事情が……ドロッドロすぎて……。


7年の年月が過ぎ、イングランドはパリを征服。シャルロットは南フランスの亡命政府に。リッシュモンはフランスから追放の身に。フィリップはブルゴーニュを率いてイングランド側に。そしてモンモランシは誰からも顧みられぬまま、おたずね者の錬金術師に。
かつて友情を誓った幼なじみたちは敵味方に分かれてしまい、バラバラになったフランスは今にもイングランドに滅ぼされようとしています。
そんな中、妖精の女王アスタロトと共に賢者の石の研究をしていたモンモランシは、運命の少女・ジャンヌと邂逅。
モンモランシとの熱いベーゼ(!)によって賢者の石の力を得たジャンヌが、一介の村人の身からフランスの「聖女」になっていく様は、読んでいて胸を熱くしてくれました。しかし見た目10歳くらいの金髪幼女と毎日ベーゼを交わすモンモランシさんの姿……どう見ても危ない大人である。
賢者の石によって加速の力を得たものの、制限時間は3分間と、正直圧倒的なほどの強さは感じさせないジャンヌ。モンモランシとジャンヌは、バラバラになった幼なじみたちの心を繋ぎとめ、フランスに勝利をもたらすことができるのでしょうか。
ひとまずはオルレアン解放戦が待ち受けています。記憶が薄れない内に次巻も読んでしまいたいですね。2冊同時刊行でよかった。


イラストはメロントマリさん。可愛さと格好良さが同居した、安定感のあるイラストですね。
キャラデザが好きなのはシャルロットです。


この聖女さん、ちょっと胸の大きさを気にしすぎじゃないですかね!