まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

英雄失格 という訳で、世界を滅ぼします

ストーリー
数多の世界を救った英雄達が一堂に会するアパート・フダラク荘。
神の使いである総一は、七日後に迫った世界の滅亡を回避すべく、彼らの力を借りるためにフダラク荘へと足を運ぶ。
ところが総一がそこで見たものは、元英雄たちの堕落しきった姿だった……。



更伊俊介先生の新作。完全にダメ人間と化した元英雄たちに世界を救ってもらうべく、神の使いの少年が奮闘するハイテンションコメディ。
致命的にツッコミが不足しているカオスっぷりが楽しいギャグ作品でした。
ダメ人間ばかりの元英雄たちですが、それぞれ妙な魅力がありますね。


勇者の中の勇者。天才魔法少女。最強の神竜。正義の変身ヒーロー。かつて多くの世界を救ってきた彼ら英雄たち。
しかしその今の姿は、世界を恨みすぎて滅びを願う逆恨み魔人、饅頭、アル中トカゲ、そして留置所から脱走してきたロリコン
いやー意味が分からないですね。特に饅頭。饅頭が好きすぎて自身が饅頭になるってどういうことなんだよ! 魔法少女要素どこいった!
世界を救うとか、正義とか、全部投げ出して自分の欲望のままに生きる彼ら元英雄たちは、世界に滅びが迫っているというのに思いっきり自堕落で、どうしようもない奴らなんですが、人間味に溢れていて憎めません。いやまあ半分人間じゃないわけだけど。饅頭とトカゲなんだけど。
ヒロインのエリカは、少しほっとくと世界を滅ぼそうとする超危険な破壊神。でも普段の彼女は最初から妙に総一との距離が近くて、どこか子供っぽくて、可愛げのある女の子でした。
とはいえ彼女のせいで、7日後に迫る世界の滅びがますます加速していっちゃうわけで、なんかもういっそ普通の女の子だったらよかったのに!


世界を滅ぼしに来た魔王は、英雄たちに比べてすっごく真面目(!)。自分の職務に忠実だから見ていて安心するよ……魔王なのに……。
とはいえ、彼女はあくまで世界の敵。そして総一の命のピンチ。そこに颯爽と現れる元英雄たち!
悔しいけどちょっとカッコいい。確かにカッコよかった。カッコよかったのは一瞬でしたけど……。
まあなんだ、正義のために世界を救う、なんていうのより、自分の欲望のために邪魔者を倒す、の方がある意味ブレなくまっすぐに生きていると言えなくもないかな! 到底英雄っぽくはないですが!
オチもよかったです。元英雄たちの強烈すぎるキャラに呑まれて地味さが拭えない総一ですが、そんな彼にも重要な職務ができたではないですか(ツッコミ以外の)。
住人も増えてますます賑やかになったダメ人間たちが、次にどんな騒動を巻き起こしてくれるのか、次巻も楽しみです。


イラストは鍋島テツヒロさん。英雄たちの元の姿と今の姿の落差がひどい(笑)。
ギャグタッチのイラストが映えていてよかったですね。


クロさんと諒子の翻訳芸が好き。Yeah。