まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

あれは超高率のモチャ子だよ!

ストーリー
特殊紙幣モチャ子によるモチャ子経済がすべてを支配する帝釈学園。
晃の所属する配当局は、学園を分割する二大組織、執行局と公安局の狭間で細々と活動していた。
ある日、幼馴染・ユイが二大組織への上納金を強奪される事件が起きて……。



第20回スニーカー大賞<特別賞>受賞作品。
「買えないものはない」と言われる学園内貨幣「モチャ子」を巡り、強大組織と熾烈な戦いを繰り広げる騙し合い×マネー×コメディ。
面白かったです。ツッコミを受け付けずテンションのままに飛んで行くクレイジー・コメディの類かと思いきや、終盤はわりとガチの頭脳バトルが繰り広げられていて驚き。
ギャグや展開等なんでもありに見えて、読んでいくと一定のルールに則って作られていることが分かるあたり、バランスを取るのが実に上手いですね。


モチャ子。それは学園を支配する神……!
ええ、まあ学園内貨幣という設定はいいとして、まずなんだよそのネーミングセンス……とツッコむ暇さえ与えてくれないツッコミ待ちギャグの連続。笑わせてもらいました。やりたい放題やっとるな!
金(モチャ子)さえあれば、人だろうが物だろうが進路だろうが、何もかもを買えてしまう異常な学園で奮闘する人々は、やっぱりみんなどこかが可笑しい。
中でも際立っていたのが、アホ毛をチャームポイントと言い張って譲らないアホの子ヒロイン・ユイですね。
すごいアホの子っぷり! 大事な上納金を5分で奪われちゃうし、獲られた理由がまたひどいし、突き抜けてる!
でもどこまでも天真爛漫で、晃への好意を直球に表現してくるところとかは憎めないですね。うむ、アホの子ほどかわいい。


そんなユイや、ゾクゾク病なる奇病に罹患している適当男子・炉端、「ロボットではない」女の子・西崎を従えて、配当局の窮地を脱するために奔走する晃。
配当局に君臨する絶対君主・三島をはじめ、執行局トップの超カリスマ・大鳥や、公安局のナンバー2・篠本など、カネの世界で成り上がった人々は軒並み化け物揃いです。
そんな化け物たちを相手に、ルールの裏をかき、騙し、時に騙され、嘘をいくつも用意して立ち回っていく頭脳バトルに燃えました。
晃はいつもどこかふざけた様子で、かるーく生きてる感じの主人公らしからぬ主人公ですが、やるときゃやる姿はなかなか格好良かったですね。なんというかすっごく悪どいけど!
それから、篠本はともかく、大鳥も敵ながら魅力的なキャラクターでした。さすがはカリスマというべきか、転んでもただでは終わらない確固たる強さを感じます。
配当局の、すなわち三島と晃の野望の道はまだ始まったばかり。次はどうやって現状を突き崩していくのか、楽しみです。


イラストはU35さん。キャラクターの表情が豊かで毎回見応えのあるイラストでした。
表紙も素晴らしいですね。タイトルと組んで一本釣りされちゃう。


脱兎アホ毛モードってなんやねん。