まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

SとSの不埒な同盟

ストーリー
芸術音痴でありながら美術部に入部した真田大輝には、真の目的があった。
それは、美術室から見える合奏部の美園千冬を、相手に気付かれず心ゆくまでガン見して、鑑賞すること。
そんな大輝はある日、部員の藍本ルチアが自分と同じように音楽室を眺めているのに気付いて……。



SとS。同じ趣味を持った主人公とヒロインが偶然出会い、お互いの恋のために手を結ぶ学園恋愛ストーリー。
ううーん! 野村美月先生の作品は、本当に毎回ムズムズさせてくれますね!
お互いは恋愛対象にならないはずなのに、それぞれが見つけてきたMなターゲットとの恋を応援し、されていく中で、なんとなく相手のことが気になってきてしまう主人公の心の揺らめきがじわじわハートにくるお話でした。


気弱な女の子を泣かせたい。なよっとした男の子を監禁したい。
そんなSな願望を秘めつつ、向かいの校舎の音楽室にいるターゲットを「鑑賞」する大輝とルチア……なんて残念な主人公とヒロインなんだ……。
色々と妄想を働かせながら覗きに勤しむふたりの姿は端的に言って薄気味悪い!(笑) でも、S同士で好きな人のことを語る様子はとても楽しそう。SとSだけれど反発しない、妙に波長の合うこのふたりは、なかなかに面白いコンビっぷりを見せてくれます。
ルチアの恋に大輝が手を貸し、大輝の恋をルチアが手伝い。
でもそんな関係を続けながらも、大輝の心の中にはなぜかルチアの姿が。恋愛対象にはならないと自分でも思っているのに、素直にルチアの恋を応援できずにもだえる大輝の姿に、申し訳ないけれどニヤニヤしちゃいます。


大輝が初めに好きになった女の子・千冬は、小動物系で確かにS心をくすぐられる感じの、とても可愛らしい女の子でした。
そんな魅力的な子と、第1章でまさかの関係に……なりかけたのに、どうしてこうなってしまったの!
個人的には断然千冬が好きだったんですが、あまりに主人公からの扱いがひどすぎて笑えてきます。まあ、そこからの何か吹っ切れた姿が、また可愛くてよかったんですけど。彼女にはぜひ頑張ってもらいたいですね……。
で、肝心の大輝なんですが、そんな千冬をほっぽって新しい女の子をターゲットにチョイス。無自覚とはいえあんた鬼か。しかしまたこの窓子先輩が可愛い人で、正直女の子の趣味は素晴らしいと言わざるを得ない。
最後には窓子先輩ともずいぶん進んだ仲になってしまいましたけど、宙ぶらりんのままのルチアとの関係をどうするのかや、千冬や弓華の想いはどうなってしまうのかなど、このままただでは終わらない気配。
次の巻で決着がつくのかな? このもやもやした恋の現状から、どんなラストを見せてくれるのか、続きが楽しみでなりません。


イラストはふゆの春秋さん。元々好きなイラストレーターさんでしたが、野村作品とのマッチングは神がかっていますね!
ヒロインの中では弓華のデザインが特に好きかも。太眉は正義なのです。


女の子の口にサクランボを押し込むロマン……。